研究概要 |
近年,中空粒子の低密度,高比表面積,物質内包などの中実粒子と異なる種々の性質を活かし,中空粒子は軽量材,断熱材,複合材料,色材など幅広い分野で応用が気体されている材料である。中空粒子や発泡体および多孔体を用いた断熱材は既に広く用いられているが,ナノサイズの中空粒子を利用した断熱に関する研究報告はこれまで無かった。 申請者らは無機結晶を鋳型する合成技術(特開2005-263550等)を開発し,この方法で合成されたナノサイズの中空シリカ粒子の応用としてポリマーとのハイブリッド薄膜の材料開発を進めている。こうした応用材料開発の過程で,申請者らは,中空シリカ内部ナノサイズの空気をポリマー等の材料中に閉じ込めることによって,ミクロンサイズの発泡体や多孔体では得られない非常に高い断熱性能が得られるのではないか,という着想を得た。実際に,このナノ中空シリカ粒子を内包するポリマーフィルムの熱伝導率を測定したところ,バルクの空気に匹敵する低い熱伝導率(0.027W/mK)を有する,という実験結果を得た。(藤正督ら,第46回粉体に関する討論会,2008年)これは,空隙率がおおよそ50vol.%であることを考慮すると,"超断熱"と呼ぶべき高い断熱性能である。 この超断熱薄膜の材料設計のためには、超断熱メカニズムの解明が必要不可欠である。本研究ではハイブリッド薄膜を構成する三つのナノサイズ要素である(1)中空シリカ内部空孔にナノ空間に閉じ込められた気体分子、(2)ナノサイズ厚みのシリカシェルおよびマイクロ細孔、(3)ナノサイズの中空シリカ粒子間隙に存在するシェル表面に拘束されたポリマー分子について、各要素のバルクとは異なる特異的な物性に着目して、超断熱メカニズムを解明することを目的とする。
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