研究課題
申請者は、透過電子顕微鏡(TEM)および走査透過電子顕微鏡(STBM)のための高傾斜3軸試料ホルダーを世界で初めて開発し、転位をはじめとする結晶内部ナノ構造の3次元可視化技術を大きく進展させた。本研究では、球面収差(Cs)補正機付TEM/STEMのレンズ系調整を試料交換なしに行える機能を上記ホルダーに付与するとともに、熱膨張による試料ドリフトを抑える改良を施し、将来の超高分解能3次元TEM/STEM観察に対応できる新規高傾斜3軸試料ホルダーを開発することを目的としている。本年度は、昨年度に作製したCs補正TEM/STEM対応型の高傾斜3軸試料ホルダーのテストと改良を行い(メルビルの協力による)、原子分解能観察に適用できるまで完成度を高めた。また、同ホルダーをTi合金、Mg合金等の転位組織の三次元トモグラフィー観察に適用した(英国バーミンガム大学Ian P.Jones教授、Yu-Lun Chiu講師との共同研究)。国内外の数台のFEI製TEM/STEM機を用いて、開発した高傾斜3軸試料ホルダーを使用したが、これまでのところ、電顕本体を故障させるトラブルは起こっていない。試料ホルダーの耐久性も向上し、バーミンガム大学での3ケ月間の使用の間にも故障はなかった。このように、本研究課題で開発した試料ホルダーは、単なる特定研究目的のための装置ではなく、汎用機としてのレベルにまで到達してきている。そこで、今年度は電子顕微鏡最大手の日本電子製Cs補正TEM/STEM仕様に合わせた高傾斜3軸試料ホルダーの開発に着手した。プロトタイプを完成させ、通常の3次元TEMトモグラフィー観察を実施し、先に作製したFEI仕様と同等の3D画像データが得られることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
試料ホルダー開発がほぼ予定通り進んでおり、収差補正レンズ系調整用の非晶質試料を搭載したダブル試料ステージ機構は完成し、原子レベル観察も可能であることが確認できているため。
Cs補正TEM/STEM対応高傾斜3軸試料ホルダーの開発の意義を明確に示すための実験計画と実施。具体的には原子レベルの3次元観察が最も直接的なデータとなり得る。試料は金属ナノ粒子を想定しており、ドイツのヘルムホルツ研究所のグループから提供を受けている。仮に、データ取得が成功した場合、3次元画像再構成のアルゴリズムの検討が必要になる。これについては、ドイツの同グループが開発した新しい3次元再構成アルゴリズムを適用する予定である。従来の試料ホルダーとのデータ比較も行い、開発したホルダーの評価をより明確に行うべきと考えている。
すべて 2011 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Ultramicroscopy
巻: 111 ページ: 1168-1175
DOI:10.1016/j.ultramic.2011.03.021
可視化情報
巻: 31 ページ: 98-103
Microscopy and Microanalysis
巻: 17 ページ: 983-990
doi:10.1017/S143192761101213X
http://melbuild.com/