研究課題
次世代太陽電池として注目されている色素増感太陽電池は、ほとんどの場合、希少金属であるルテニウム錯体を使用している。その吸収波長は400~800nmに限られているため、色素増感太陽電池の性能を向上させるためには近赤外(800~900nm)の光を有効に吸収し電子に変換する色素が必須であると言われている。イカ墨色素は200nm付近の紫外光で吸収が最大となり、800mまで次第に減っていくが、それ以上の近赤外の領域でも光を吸収することが分かっている。スルメイカの墨袋は函館エリアにおいて年間約140トンが未利用のまま廃棄されている。イカ墨は研究代表者らが開発した技術によって可食性黒色色素としてインクジェットプリンターに利用できるが、色素増感太陽電池に利用できる目処が立てば食品廃棄物の有効利用につながる。本研究では粒子径や濃度の異なるイカ墨色素を用いて色素増感太陽電池の研究を行った。酵素による不純物の分解および限外ろ過によるイカ墨粒子の分離・精製により、約300nmと1nmの粒子を得た。光吸収スペクトルの分析結果から、イカ墨色素は幅広い波長に吸収があり、それは、300nmイカ墨において大きかった。光電変換効率に及ぼす粒子径の影響を調査したところ、比較的高濃度で1nm粒子の方が光電変換効率は高くなった。二酸化チタンの細孔のサイズよりもはるかに小さな1nmのイカ墨粒子は細孔の奥まで侵入し、より多くの光を吸収して光電変換効率を高める可能性が期待される。
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: VOL.49 ページ: 06GJ11(1-4)