研究課題/領域番号 |
22310072
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
上野 孝 函館工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (10310963)
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研究分担者 |
湊 賢一 函館工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (40435384)
松浦 俊彦 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50431383)
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キーワード | 太陽電池 / ナノ材料 / イカ墨 / 廃棄物再資源化 / 農林水産物 / バイオテクノロジー |
研究概要 |
本研究では、約300nmと1nmに粒子径を制御したイカ墨を用いる色素増感太陽電池の研究を行った。当該年度では、特に大きい粒子、すなわち精製イカ墨粒子の色素増感太陽電池への利用について検討し、以下のような成果が得られた。 色素増感太陽電池用TiO_2電極の多孔性を高めるための増進剤として精製イカ墨粒子を利用した。スクリーン印刷法を用いて、チタニアペーストに精製イカ墨粒子を混合したペーストを透明電極上に積層してTiO_2電極を作製した。成膜した電極を120℃で焼成した場合、TiO_2電極は黒褐色に着色されたままであり、TiO_2電極に精製イカ墨粒子が残留する不十分な熱処理であった。一方、450℃で焼成すると白色のTiO_2電極に変化し、精製イカ墨粒子が分解蒸発した。それと同時に、TiO_2電極の表面粗さが増大した。チタニアペーストに対する精製イカ墨粒子の混合比を増加させると、TiO_2電極の表面粗さも増加した。これは精製イカ墨粒子がTiO_2電極の多孔性を高める増進剤として効果があることを示唆している。そして、チタニアペーストと精製イカ墨粒子の混合比が7対3のとき、TiO_2電極の表面粗さが最大となった。しかし、色素増感太陽電池の光電変換効率は最も低い値となった。チタニアペーストに対する精製イカ墨粒子の混合比が過剰になると、直流抵抗が増大するものと思われる。このことから、TiO_2電極の多孔性を増大しすぎると、電子の移動が妨げられる可能性が示唆された。このように、チタニアペーストと精製イカ墨粒子の混合ペーストを用いることにより、TiO_2電極の表面形態と色素増感太陽電池としての特性を明らかにした。得られた知見はTiO_2電極の多孔性を高めるための手段としてはまったく新しい試みであり、次年度の研究でさらに発展させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたとおり、約300nmの精製イカ墨粒子の色素増感太陽電池への利用において、新規な用途を見出して査読付き論文で受理された。約1nmの微細粒子の利用において試行錯誤をしているが、多くの知見を蓄積している。
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今後の研究の推進方策 |
チタニアペーストと精製イカ墨粒子の混合ペーストを用いることにより、TiO_2電極の多孔性を増大させることに成功した。次年度においては、多孔性を保ちつつ、光電変換効率を向上させる手段について検討する。 ソーラーシミュレーターで励起された電子がイカ墨色素から飛び出し、電気を発生しながら回路を一回りして、基底状態のイカ墨色素に戻るためには、より適した電解液を使用する必要があり、TiO_2ペーストとともに最適な条件の検討を行う。
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