[1] 昨年度までに開発済みの「三/四端子型単電荷トンネルデバイスの基本骨格合成法」の応用展開として、多端子型デバイス同士を逐次接合し「単一分子内集積化回路」を構築するための方法論について探索した。低/中サイズのモデル分子群について検討した結果、デバイス本体の構築には高活性の臭素/ヨウ素系のカップリングサイトを、デバイス同士の接合には低活性の塩素/窒素系のカップリングサイトを組合わせて利用する「反応階層化法」が、デバイス構築から集積化までの一連のシステム化に有効であることが分かった。 [2] トンネル接合と静電接合とを作り分けるための指針を実験的に確立するため、 「ポテンシャル障壁の形状を精密かつ広範囲に変化させることが可能」であり、かつ「多端子型デバイス分子骨格内に容易に導入が可能」である分子ブロック群(アルカン/シラン/アミノ/アリール環ユニットの混合系)を開発した。 [3] 170 nm 長までの分子鎖群の「基板上での配座構造」について、エレクトロスプレー法で作成した試料を用いた高分解能STM観測から検討した。 本研究の鎖状分子ユニットは、 溶液中のスペクトルデータ等からは「分子鎖の剛直性や共平面性は、小」と判定され、直鎖構造ではなく、絡み合った鎖構造をもつものと予想されていた。しかし、平坦基板上では、側鎖部の吸着により主鎖の共平面配座が安定化され、60nm長くらいまでは鎖状に伸展した分子鎖も観測されることが分かった。この結果は、分子-基板間相互作用を活用すれば、柔軟巨大分子の基板上での「その場-形状制御」が可能な事を示すものである。これをうけて、剛直系に比べ溶解性に優れた柔軟巨大分子系を活用したウェットプロセスによる分子配置法の開拓を進めている。
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