研究課題/領域番号 |
22310075
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西野 吉則 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (40392063)
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研究分担者 |
前島 一博 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 教授 (00392118)
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キーワード | コヒーレントX線 / 染色体 / X線回折顕微法 / ナノ構造解析 / 位相コントラストイメージング / オルガネラ / 高次構造 / 位相回復 |
研究概要 |
本研究では、コヒーレントX線を利用したX線回折顕微法(XDM)によるクライオバイオイメージングに向けた研究開発を行う。これにより、ヒト染色体、細胞核、精子などにおけるヒトゲノムDNAの折り畳み構造の理解に貢献することを目的とする。 本年度は、本課題で用いられるX線顕微法の装置を用いて、ヒトの分裂期染色体の構造を詳しく解析した。DNAはヒストンに巻きついてヌクレオソームとなり、このヌクレオソームが30-nmクロマチン線維に折り畳まれ、さらに規則正しい階層構造を取ることで染色体が構築されると長年考えられてきた。分子生物学の最も有名な教科書である「細胞の分子生物学」では、過去25年以上に渡って、この定説が掲載されてきた。また高等学校の生物IIの教科書にも記載されている。しかし、大型放射光施設SPring-8で得られた実験データを解析した結果、ヒト染色体は30-nmクロマチン線維よりもむしろ、ヌクレオソーム線維の不規則な折り畳みによって構築されていることを発見した。本研究内容を論文にまとめ投稿し、EMBO Journal誌に掲載された。この成果は、EMBO Journal誌、日本経済新聞、日経産業新聞、日刊工業新聞などでも解説記事がとりあげられた。 さらに、凍結水和生体試料では、試料粒子の周りは氷の層が広がっているため、従来のアルゴリズムがそのまま適用できない可能性がある。このためデータ解析アルゴリズムの改良に取り組んだ。従来提案されていた試料位置をスキャンしオーバーラップした異なる試料領域からの回折データを用いる方法に加えて、ひとつの試料領域での回折データのみから試料像を再構成する方法についても計算機シミュレーションを行った。この結果、新たに開発したアルゴリズムの有効性を示す結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題で用いられるX線顕微法の装置を用いて、これまでの定説を覆し、ヒト染色体はヌクレオソーム線維の不規則な折り畳みによって構築されていることを発見した。これにより、ヒトゲノムDNAの折り畳み構造の理解に貢献することができた。また、凍結水和生体試料に対するアルゴリズム開発でも良好な結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
単離したヒト染色体や、興味深いクロマチン構造をもつヒトデ精子核に対して、大型放射光施設SPring-8を用いた測定を進める。また、凍結水和生体試料に対するアルゴリズム開発の研究を論文としてまとめる。
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