研究課題/領域番号 |
22310076
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田和 圭子 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (80344109)
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研究分担者 |
梅津 光央 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70333846)
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キーワード | ナノ界面・表面 / 周期構造 / バイオチップ / 蛍光 / 抗原抗体 / プラズモニック / 酸化亜鉛 |
研究概要 |
金属薄膜でコーティングされた周期構造チップ(=プラズモニックチップ)では、プラズモンポラリトンと光との共鳴を利用して、抗原抗体相互作用によって結合したターゲット蛋白質から増強蛍光を検出することができることを示してきた。本研究では、(1)350あるいは500nmの周期構造(ピッチ)を有し、(2)金属薄膜(銀)を高屈折率無機薄膜(酸化亜鉛)でコートし、(3)酸化亜鉛に特異的に高密度に結合する抗酸化亜鉛抗体を利用する、という特徴をもつバィオチップにおいて、その構造に依存した光学特性と増強蛍光のメカニズムを明らかにしてきた。本年度は、様々なマーカータンパク質を認識するアッセイを構成するといった多様性を視野に入れたための重要なパーツとして、ビオチンタグ抗酸化亜鉛抗体を利用した系を用い、従来のバイオチップよりも1,2桁高感度な1pMオーダー以下の高感度かつ高精度でマーカー検出できるサンドイッチアッセイシステムの構築を目指した。 まず、酸化亜鉛へのビオチンタグ抗酸化亜鉛抗体の結合について、リン酸が酸化亜鉛膜への抗体の結合を阻害し、抗体とリン酸の酸化亜鉛表面への結合において、競争反応が起こっていることがわかった。そこで高濃度な抗体溶液をチップに加えることで、抗体の選択的な結合が確認できた。サンドイッチアッセイとして神経栄養因子(BDNF)をマーカーとするアッセイ【ビオチンタグ抗酸化亜鉛抗体+ストレプトアビジン+ビオチン標識BDNFプロペプチド+BDNF(=マーカー)+蛍光標識抗BDNF抗体】を構築した。これによって1pMを検出することができた。しかしながら、CRP(C-reacdve protein)をマーカーとしたサンドイッチアッセイの研究では、検出抗体をリンスすると、蛍光強度が減少し、マーカーごと外れて流れていってしまった。検出抗体の親和定数が低いためと考えられたので、より親和定数の大きい抗体を用いる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サンドイッチアッセイとしてCRPをマーカーとしたアッセイの研究を進めたが、検出抗体をインキュベーション後、リンスすると、蛍光強度が非常に小さくなり、マーカーごと流れていってしまうようであった。よって、より結合力の強い抗体を探す必要があり、抗体の選定に時間がかかってしまった。また、酸化亜鉛への抗酸化亜鉛抗体の結合についても、リン酸緩衝溶液が抗体の結合を阻害することがわかり、そのメカニズム解明に時間がかかったために、本来のサンドイッチアッセイを用いた高感度バイオセンシングに関する研究が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
酸化亜鉛とリン酸緩衝溶液の反応は、抗体濃度を高くした溶液を用いることで阻止できることがわかったので、来年度は濃度調製に注意したい。また、サンドイッチアッセイについては、CRPによらず、高感度計測ができるサンドイッチアッセイを選んでいきたい。
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