研究課題/領域番号 |
22310077
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所 |
研究代表者 |
前田 文彦 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 主幹研究員 (70393741)
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研究分担者 |
日比野 浩樹 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 部長 (60393740)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | グラフェン / 分子線エピタキシャル成長法 / 六方晶窒化硼素 / 界面反応 / ヘテロエピタキシャル成長 / 単結晶領域 / 表面拡散 / X線光電子分光 |
研究概要 |
本研究は、グラフェンMBE成長の最適条件探索に必要なホモエピタキシャル成長による成長過程の解明とヘテロエピタキシャル成長の試行による2段階で進める。そのため、昨年度は、MBE成長に最適な成長材料の検討を進め、成長膜質向上を確認してエチレンの優位性を明らかした。この結果を基にして平成24年度は次のステップとしてヘテロ成長実験に着手した。 これまでホモエピタキシャル成長過程解析より、低い表面反応性と長い表面拡散長が成長用基板に重要であるという指針を得ており、ヘテロ成長用の基板として当初の構想通り六方晶窒化硼素(h-BN)が合致することが判った。そこで、成長用基板としての適正を調べた。具体的には、サファイア基板上に成長した大面積で方位のそろった結晶性BNを基板として用い、グラフェンのMBE成長を試みた。その結果、グラフェンの成長に必要な1000℃近い高温でも界面反応は起こらず、BN上にグラフェンが成長可能であることが分かり、ヘテロ成長用基板として適していることが判明した。 しかし、サファイア上に成長したBNの単結晶領域面積が小さいためMBE成長したグラフェンも単結晶領域面積が小さいという問題点も明らかになった。これは、高品質グラフェン成長には、高品質BN薄膜が必要であることを示している。そこで、高品質BN薄膜作製を目的として、SiCの熱分解で作製したエピタキシャルグラフェンを基板としたBNのCVD成長実験を行った。その結果、極低成長速度の条件でエピタキシャル成長を示す幾何学的な結晶の成長が確認できた。これは、高品質BN成長が可能であることを示している。しかしながら、実用的な成長速度では基板グラフェンが劣化し、成長したBNが低品質化することも判った。以上より、この課題の解決により目的の高品質大単結晶領域面積BNの形成が可能であることが判明し、次のステップへ進める目処がたった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時には、平成24年度にBN上へのグラフェンヘテロ成長に着手し、ヘテロ成長用基板としての適正を判断することを第一の目的としており、その適正を示すことができたことで計画通りに進展している。また、本研究に適したグラフェン上へのBN薄膜作製の検討も申請時に計画しており、その課題を明らかにした。以上の経過は、最終年度のヘテロ成長条件の最適化へと進めるよう進展していることを示しており、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度判明した課題を解決し、グラフェン/h-BNヘテロ構造作製に向けた条件の最適化を進める。昨年度の経過が示すように、この研究の課題は高品質BN膜の作製である。ここで、比較的厚いグラフェン上であれば高品質BNが得られることを示唆する結果を過去に得ている。そこで今期は、SiCの超高真空中高温加熱により数原子層厚グラフェンを形成し、それを基板としてBNを成長することで解決するよう進める。さらに並行して、下地グラフェンの劣化原因となる反応性ガスを用いないBNのMBE成長を試みる。こうして高品質BNを形成し、これを基板としてグラフェンのMBE成長を行い、グラフェン/h-BNヘテロ構造作製の条件最適化を行う。
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