研究課題/領域番号 |
22310079
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩崎 憲治 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (20342751)
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キーワード | 電子顕微鏡 / 相関顕微鏡 / CEMOVIS / 電子線トモグラフィー / クライオ電子顕微鏡 |
研究概要 |
本課題申請時における計画通りに、昨年度行った傾斜角度の実測の解析をさらに進め、厳密な評価をを行い、論文にまとめ、投稿を行った。以下、その内容である。試料傾斜は、電子顕微鏡用カメラを制御するソフトを通して、通信によって電子顕微鏡本体のシステムを制御して行った。この際に入力する傾斜角をインプット角と名付けて理想値とし、その値からのずれを評価した。一つは、実測値からのずれである。ゴニオメータに工作して取り付けた高精度の測定器からの読み取り値とインップト角のずれを計算した。また、試料上に付着させた金コロイド粒子を使用して、撮影画像自身から計算した傾斜角との比較も行った。これは、現在電子線トモグラフィーを生物試料で行う上で最も広く一般的に使われている方法である。この傾斜角算出方法で最も精度が悪い場合として、金コロイド粒子を3つだけ使用して角度を算出し、精度が高い場合として、100個を使用して角度を求めた。最後に金コロイド粒子のようなマーカーが利用できない場合に使用されているマーカーフリーアライメント方法によって角度を算出した。これら実測値を含む4種類の傾斜角とインプット角との差をインプット角に対してプロットし、その評価を行った。理想値からのずれは、どの場合も全体として約40度の周期をもった振動を示した。試料ホルダーを変えても同様な傾向が見られた。統計学的解析によりこれらの値には有意な差が存在しないことがわかった。よって、アモルファス氷層試料のように、十分なマーカーを取得画像中に得るのが困難な場合においても、実測により、撮影画像に影響されず解析ができることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
傾斜角の実測とその評価は、完遂し、論文として報告することができたので、完全に達成できたといえる。 一方で、当初は傾斜角の実測およびその従来の方法との比較、評価が終了後、傾斜角取り入れプログラムの開発を行い、その後、倍率変動の測定を行う予定であった。しかし、傾斜角の実測とその評価方法に手間取り、計画が大幅に遅れた。また、この傾斜角の実測評価実験中に、電子線トモグラフィー再構成像の評価基準をつくることが非常に重要であることがわかり、これを実験計画に新たに取り入れたことにより、当初計画に関しては遅れが生じた。しかし、再構成像の評価基準の考案は非常に重要であるにもかかわらず(学会等で頻繁に要求がなされるにもかかわらず)、これが世界的にもまだ存在しないことは、本課題に取り入れる意義は十分にあったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、再構成像評価プログラムの本格的な開発を始める。金コロイド粒子を使用したテストデータの取得を行い、生物試料一般に使用できる統一的な評価基準の作製に取り組む。また、当初計画にあった、レンズ電流値と倍率変動の測定も開始する。レンズ電流値と倍率変動の測定評価の終了後に、培養細胞を使用した相関顕微鏡法によるアモルファス氷層試料の観察を開始する。
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