23年度の傾斜角測定の解析において、三次元再構成像(トモグラム)自体を角度値の主たる精度評価に使用しなかったのは、電子線トモグラフィーから得られたトモグラムの精度を客観的に評価するための方法、基準が存在しなかったからである。電子線トモグラフィーが広く使用されるようになったのにもかかわらず、こうした統一基準が存在しないことも重要な理由として、その考案を研究計画に新たに取り入れた。 フォーカスの変化量に応じた倍率変動の評価測定では、表示倍率8万倍(取得画像では、0.22nm/pixに相当)にて-60度から+60度まで試料を傾斜させながらフォーカスを調整したところ、20マイクロメートルのフォーカス変化量が傾斜像シリーズ取得中にあり、これにより約4%程度の倍率変動が起きたことが判明していたが、倍率の見積が撮影画像に依存しているため、つまり、試料そのものに依存しているため、正確な見積方法や、測定時の条件の統一等、再現性に問題があり、信頼ある結果を得るための実験の実現に難航した。 本年度最終目標である相関顕微鏡によるアモルファス氷層試料の観察への取り組みとして、まずはCOS細胞を用いて実験を開始した。細胞の培養状態を保持したままの相関観察は、光学顕微鏡による観察と電子顕微鏡による観察の間にラグタイムがあり、非常に難しいことが、当初予想していた以上であることがわかった。相関実験の当初からアモルファス氷層を用いた観察を行うよりも、弱蛍光だが、蛍光を保持する新しい樹脂包埋方法を使用する方がその操作方法からも、効率的であるという考えに至った。
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