研究概要 |
破傷風ワクチン抗原を先端部に配置した2種類の溶解性マイクロニードル・アレイ・チップを高い再現性でもって調製する方法を確立した。抗原の充填部位の長さは先端から約70μmであった。至適投与量を探索するために高用量と低用量のチップを調製してワクチン抗原含量を測定したところ、約1.0Lfおよび2.0Lfであった。そこで、ラットを用いて免疫学的実験を行った。2層マイクロニードル・アレイ・チップ投与群については、1.0Lf投与群において、2週間後の血清中抗体価はNDであったが、その後、抗体価の上昇が認められた。すなわち、5622±1195U(4weeks),5341±1278U(6weeks),4053±1322U(8weeks)であった。一方、2.0Lf投与群では、2週間後の血清中抗体価は同様にNDであったが、その後、抗体価の上昇が認められ、4251±1020U(4weeks),3553±1347U(6weeks),1436±539U(8weeks)であった。次いで、3層マイクロニードル・アレイ・チップの調製にチャレンジして、成功を収めた。抗原の充填部位は先端から約250~370μgであった。抗原の含量は約1.0Lfおよび1.5Lfであった。1,0Lf投与群において、血清中抗体価は、12849±3200U(2weeks),37863±6415U(4weeks),200758±39079U(6weeks),146441±21948U(8weeks)であった。一方、1.5Lf投与群では、血清中抗体価は、4220±812U(2weeks),267750±48572U(4weeks),172329±21342U(6weeks),163573±33895U(8weeks)であった。このように、3層マイクロニードルが極めて高い抗体価の誘導に成功を収めた。2層および3層マイクロニードル・アレイ・チップからの抗原のデリバリー部位は各々真皮層および表皮層であるので、破傷風ワクチンにおいては皮膚の表皮層に多く分布するLangerhans細胞が経皮免疫のターゲット部位となっていることが明らかとなった。溶解性マイクロニードルの基剤として使用したコンドロイチン硫酸およびデキストランの安全性を検証するために臨床第1相試験を行ったが、投与部位の皮膚には炎症はみとめられず、安全性に富むDDSであることが検証された。
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