研究課題/領域番号 |
22310084
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
葛西 誠也 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (30312383)
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研究分担者 |
前元 利彦 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (80280072)
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キーワード | 半導体ナノワイヤ / 3分岐接合 / ナノデバイス / 非線形 / ゲート制御 |
研究概要 |
次世代エレクトロニクス基盤材料である半導体ナノワイヤの3分岐接合構造は、信号処理に有用な非線形な電気的特性を室温で発現する。本研究の目的は、本デバイスの非線形メカニズムを、接合のキャリア輸送機構やポテンシャルの評価解析を通して解明することである。また、独自のゲート制御デバイスの制御機構の理解、デバイスモデルの構築、および特性制御による動作電圧の低減を目指す。平成23年度の成果は次の通りである。 (1)ナノワイヤの電界ドメイン検出と形成機構の解明のため、独自にレーザー光誘起局所コンダクタンス変調測定系を構築した。これGaAs3分岐接合デバイスの評価を行い、ナノワイヤに低コンダクタンス部位がナノワイヤ存在しその位置が印加電圧に依存し変化すること、および、低コンダクタンス位置に光局所照射することで非線形特性が緩和することを実験的に明らかにした。本結果により室温での非線形メカニズムとして正バイアス端での電界集中モデルが妥当であることが示された。 (2)高移動度・アンビポーラ伝導材料であるグラフェンを用いた3分岐接合デバイスの試作プロセスを構築した。加熱処理と化学ドーピングの組み合わせにより、SiO_2上貼付けグラフェンにおいて高キャリア移動度15,000cm^2/Vsを実現した。本プロセスにより3分岐接合デバイスを試作し、室温での非線形特性の観測、および、曲率とその極性のゲート制御を実現した。さらに理論解析を行い、動作を定量的に説明するモデルを見出した。 (3)ゲート制御グラフェン3分岐接合デバイスによるインバータを提案した。グラフェンFETおよび3分岐デバイスモデルを創り出し、回路シミュレーションによりインバータ動作を実証した。 (4)非線形メカニズム探索および新たな応用展開の一環として、透明酸化物半導体ZnOを用いた3分岐デバイスの試作を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で提案した評価系を構築し、GaAs系デバイスの非線形メカニズム解明に寄与する新たな知見が数多く得られた。当初の計画に加え,グラフェン3分岐接合デバイスの実現と新たなインバータ回路の提案、さらに透明で環境負荷の小さく透明フレキシブル回路に応用可能なZnOを用いたデバイスへと広く展開された.また本研究で行った順序回路に関する論文に対し国際学会MNC2010よりOut standing paper awardが授与され高い評価を得た。
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今後の研究の推進方策 |
非線形メカニズム解明に関し、GaAs系素子において表面パッシベーションによって表面ポテンシャルを緩和した場合の動作評価を通し、電界集中モデルの妥当性を明らかにする。回路応用については、GaAs系デバイスの順序回路実証に既に成功していることから機能性が高いグラフェン3分岐接合デバイスへ主軸を移し、本素子によるインバータ動作の実験実証、基本論理回路応用、キャリア極性ゲート制御による回路機能変更技術へと研究を進める。ZnOデバイスについて、RFIDなどへの利用も視野に、動作実証と特性評価を行う。さらに材料毎の表面状態の違いより非線形特性を結びつけメカニズム解明につなげる。
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