次世代エレクトロニクス基盤材料である半導体ナノワイヤをT字やY字に接合した構造は、信号処理に有用な非線形電圧伝達特性を室温で示す。本研究の目的は、半導体ナノワイヤ3分岐接合(TBJ)デバイスの非線形のメカニズムを解明することである。さらに応用に向けたデバイス動作の理解、制御、新規材料への展開を図る。平成24年度の成果は次の通りである。 (1)独自に構築したレーザー光誘起局所コンダクタンス変調評価システムを用い、GaAs系TBJデバイスの2本の入力ナノワイヤ枝のコンダクタンスを測定し、正に電圧印加した枝のコンダクタンスが低く(抵抗が高い)、左右枝のコンダクタンス差が非線形特性を生じさせていることを明らかにした。また非線形特性を支配する低コンダクタンス部位がナノワイヤ端であることを見出した。 (2)2つの入力枝コンダクタンスが異なる原因を調べるため、GaAs系TBJの非線形特性の表面ポテンシャル依存性を調べた。ナノワイヤ表面にSiN膜を堆積し表面空乏を促すとコンダクタンスの非対称性が大きくなりTBJの非線形性が強まることを実験的に明らかにした。ナノワイヤの表面ポテンシャルが非線形特性の要因であることを示した。 (3)グラフェンTBJのインバータ動作に成功した。しかしながら電圧伝達利得は0.013と低い。利得の向上にはインバータの入力となるバックゲートのゲート制御性の改善が必要であること等がわかった。 (4)ZnOを用いた自己スイッチングダイオード(SSD)を試作し、動作と特性の構造依存性を明らかにし、スイッチングしきい値の制御に成功した。
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