研究概要 |
本研究の目的は,公共施設配置見直し現場で求められる1)削減方法(逐次最適方法,指標)2)空間単位(全国一律サービス対効率性)3)市民参加(官僚主導対住民投票)を理論的に考察することにある.本年度は,削減方法について集中的に考察を行った.一度建設したら移転できない施設であれば,順次施設配置場所を選択する逐次最適算法の方が,すべての施設の場所を一気に定める同時最適算法より現実的であり,貪欲算法やけちけち算法が有効である.そして,都市計画など公共施設の整備目標として,所定の割合の住民をある距離内に抑える,あるいは,利用者全体の平均距離を縮小するなどがある.これらは,移動距離縮減というベクトルの向きは一致しており,ある程度整合すると考えられる.そこで,1)平均距離最小化問題など多くの施設配置問題は整数計画問題の最大化として定式化されるが,その目的関数は優モジュラーであり,その特徴を利用して逐次算法(貪欲算法及びけちけち算法)による目的関数の上限値(最悪ケース)を理論的に導出した.この理論値は既存の上限値を大きく改善した.2)茨城県内郵便局など現実のデータを用い数理計画ソフトにて最適解を求め,カバー率最大化配置と平均距離最小化配置とが目的関数値レベルでどの程度数量的に関連するのか,最適誤差(同時最適配置と逐次最適配置の目的関数値との比や差)として実証的に把握した.両最適化問題には大きな差異が生じないことを明らかにした.3)異なる機能を持つ施設が集積する必然性を理論的に示すことにより,現場での施設削減方法に関する一つの考え方を示すことができた.
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