研究概要 |
本研究では我々が開発した社会シミュレーション言語SOARS<http://www.soars.jp>を基盤に、現実の社会経済の課題解決・政策デザインを行うための枠組みとツールを提供することを目的に研究開発を行った。実社会を対象とした複雑なシステムの解析では、様々なアスペクトからのモデルを接合した全体システムの挙動を理解し、更にそこに政策的なオプションを加える事で何らかの制約充足条件を満たすようなソリューションを見いだすシナリオ解析が求められる。成果として(1)エージェントベースのモデリングによって異なったアスペクト、異なった語彙を持つモデルコンポーネントをマイクロレベルで接合させる手法を開拓(2)この様なマルチアスペクトモデルの挙動を解析するために我々の開拓した役割指向概念を持つエージェントベースシミュレーション言語 SOARS上に、モデルコンポーネントをプログラムモジュールとして導入し(3)これらの枠組みとツールを二つの具体的な領域で応用を試みた。一つは公衆衛生学的な課題であり、もう一つがエネルギーマネージメントシステムに関する課題である。前者では感染症に関する対策や救急車の搬送問題等を扱い、後者ではスマートグリッドと対比的なボトムアップでHEMS, BEMS, CEMSを包摂するエージェントベースのエネルギーマネージメントシステムを提案した。後者ではエージェントベースモデリングに交換代数という簿記を抽象化した代数系の状態記述を導入し、エージェントベースシミュレーションにダブルエントリーの状態記述を導入するアーキテクチャを確立した。また後者に関連して特許を2件申請した。今後は相互に境界条件を構成する複数のモジュールと政策的なオプションをマイクロからメソスケールの粒度で接合させ課題解決の討議空間を構築するエージェントベースのモデリング理論と方法と手法を開拓していきたい。
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