研究概要 |
食の安心・安全および農業に関する環境問題や消費者の嗜好から,自然生態系に多大な負荷を与えない有機農業への転換が今後の農業経営に対する1つの方向性を示している.また近年は,食の多様化から出荷時期を早めた促成栽培が注目されているが,この農法では成育期間中に石油ヒーターなどの温風設備を利用することが多く,温暖化ガスの削減の観点からもこの農法の改善が求められる.このような状況の下で,(1)耕種農業と畜産農業が混在する北海道十勝での耕畜連携型農業モデルと,(2)日照時間の長い宮崎での太陽熱利用のハウス暖房による有機野菜栽培モデルの2つの農業ビジネスモデルについてその実行可能性を評価したあと,多目的意思決定の手法を用いていくつかの現実の事業推進計画(代替案)の中から適切な代替案を選定する.本年度は,十勝地方での調査を行い,定式化した多目的問題の是非を明らかにし,現地での資料収集を行った.多目的意思決定手法では多様な視点から意思決定問題を評価するために,目的構造体において評価規準を明らかにする.われわれは,耕種農業者への便益,畜産農業者への便益,耕畜連携型農業を運営する組織の運営,環境への影響の4つの視点から,本モデルを評価した.また,モニタリングやプロモーションの程度を数段階に変化させることによって,耕畜連携型農業の複数の具体的な代替案を構成した.
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