研究課題/領域番号 |
22310104
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
吉田 亮 東京電機大学, 工学部, 教授 (40105680)
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研究分担者 |
西岡 牧人 筑波大学, システム情報工学研究科, 教授 (70208148)
鈴木 仁治 東京電機大学, 工学部, 講師 (60426278)
小林 佳弘 東京電機大学, 工学部, 助教 (00550576)
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キーワード | 火災 / 消防 / 熱工学 / 防災 / ウォーターミスト / 対向流拡散火炎 / 火炎伸長率 / 消火 |
研究概要 |
本年度は複数の超音波振動子を用いてミスト発生量を広範囲に変化させることで、実際の火災の消火で用いられる場合と同程度のミスト数密度を実現することができた。その結果、対向流拡散火炎の消炎実験では、ミスト添加量が少ない場合には、ミスト量の増加とともに消炎限界速度勾配は急激に減少し、ミストの消炎効果は顕著であるが、ミスト添加量が多いと、ミスト量を増加しても消炎効果に及ぼす影響は小さくなることが明らかになった。 同軸流拡散火炎の実験では、リム厚さが厚い場合には周囲空気流速よって火炎の安定性は大きく異なることが明らかになった。空気流速が高い場合には、ミストはその慣性力によって、再循環領域に侵入することなく火炎基部を通過してしまうために、火炎の安定性にはほとんど影響を与えない。一方、空気流速が遅い場合には、滞留時間が長くなりミストは火炎基部を通過する際に蒸発し、水蒸気が再循環領域内に拡散するために、火炎の安定性が悪くなり消炎効果が大きくなることが分かった。 よどみ流予混合火炎の実験では、層流燃焼速度に及ぼすミストの影響が明らかとなった。プロパン-空気予混合火炎では、ミストを添加しない場合には、層流燃焼速度は火炎伸長率に比例して増加するが、ミストを添加するとこの傾向が逆になることが分かった。速度勾配が大きい場合には、ミストはその慣性力によりよどみ流れ場に追従せず、流れの中心付近でミストの体積流束が増加し、その結果、層流燃焼速度が減少する。ミストの体積流束は伸長率に比例するため、見かけ上マークシュタイン長さが正となることが明らかになった。 数値シミュレーションでは、実験で使用している円筒バーナの結果と比較するために、数学的なモデルの検討を行い、従来の軸対称モデルを平面二次元モデルに変更して定式化を行い、解析プログラムコードの変更を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対向流拡散火炎の研究では、面積パラメータを用いることで、ミストの粒径や数密度の消炎に及ぼす影響が明らかになり、ほぼ所期の目的を達成できた。また同軸流拡散火炎の研究では、火炎基部に形成される再循環領域が付着火炎の安定性に及ぼす影響が明らかにされ、計画通りに研究が進んでいる。またよどみ流予混合火炎の研究でも、層流燃焼速度に及ぼすミストの粒径および数密度の影響が明らかになり、この研究も所期の目的は達成できている。数値シミュレーションでは、まだ実験結果と一致する計算結果は得られていないが、数値モデルの改良が行われ、計算が実施できる状態に達している。
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今後の研究の推進方策 |
対向流拡散火炎の研究では、ウォーターミストの諸特性を変化させ消炎に最適な条件を見い出し、最適条件の物理的な意味を明らかにする。同軸流拡散火炎の研究では、付着火炎後流に形成されるリフト火炎の安定性に及ぼすウォーターミストの影響を調べる。またよどみ流予混合火炎の研究では、ミスト流束と層流燃焼速度の関係を解明する。一方、数値シミュレーションでは、円筒前方のよどみ領域内に形成される対向流拡散火炎のミストによる消炎現象に関する数値計算を行う。本年度は最終年度のため、これらの結果を整理統合して検討し、ウォーターミストによる火災の消火に関する一般的な法則を導き出す。また成果を学会発表する。
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