研究課題
本研究では、染色体凝縮タンパク質であるコンデンシン(コンデンシンI及びII)の間期での機能を、特に核小体領域のクロマチン状態と転写レベルに着目して解析することを目標とした。コンデンシンをノックダウンしたところ、コンデンシンIとIIのどちらのタイプをノックダウンした場合にも、核小体のrDNA領域のrRNAの転写量を上昇し、その領域のヒストンのアセチル化も上昇した。従って、分裂期に染色体を凝縮因子であるコンデンシンが、間期においてもクロマチンの状態を抑制する方向に制御している可能性が示唆された。さらに、代表者らは、コンデンシン以外にも、核小体に存在するタンパク質が、間期核小体のクロマチン状態や分裂期の染色体の動態を制御していることを見出した。核小体に存在する595種類のタンパク質に対するsiRNAライブラリーを構築し、網羅的な機能解析を行ったところ、58種類のタンパク質が細胞周期の進行に影響を与えていることを見出した。それらの因子のうちで、機能未知な因子Nucleolar protein 11 (NOL11)に着目し解析を進めたところ、NOL11がrRNAを足場として、核小体や染色体に結合することを見出した。NOL11は分裂期においては、Aurora Bのコネとコアへの局在を制御することにより、分裂期の進行や正常な染色体動態を制御していることを見出した。また、NOL11が間期においてはrRNA転写やプロセシングの制御に寄与していることも見出している。さらに、NOL11が他にいくつかのタンパク質と複合体を形成し、RNAタンパク質ネットワークを形成していることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
(理由)二つのタイプのコンデンシンが、核小体領域のrDNAのエピジェネティックな状態を制御している可能性を見出した。その詳細な制御メカニズムの解析は進んでいない一方で、コンデンシン以外のいくつかの核小体因子が、クロマチン状態や染色体動態を制御していることを見出しており、コンデンシンとそれらの因子を統合的に解析することにより、研究目的の解明に繋げることができると考える。
代表者らは、核小体に存在する58種類の因子が細胞周期の進行に関係し、そのうちでNOL11が、核小体rRNAの転写、プロセシング、分裂期染色体動態に重要な役割を持つことを見出した。さらに、NOL11がいくつかのタンパク質と複合体を形成していることを見出した。また、核小体RNAがNOL11を含めたいくつかの因子の核小体局在や染色体局在の足場になっていることを見出した。今後は、二つのタイプのコンデンシン、及びNOL11複合体、他の核小体タンパク質、核小体RNAのネットワークを解析することにより、コンデンシンを中心とした因子による、間期クロマチン制御の機構について解明したい。
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