研究課題/領域番号 |
22310117
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
和田 洋一郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (10322033)
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研究分担者 |
興梠 貴英 東京大学, 医学部付属病院, 特任助教 (40401046)
大田 佳宏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (80436592)
神吉 康晴 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (00534869)
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キーワード | RNAポリメレース / TNFα / ヒストン修飾 / 内皮細胞 |
研究概要 |
炎症刺激で活性化された遺伝子が、組織化されたRNAポリメレースII(Pol II)を含む転写ファクトリーに動員されて転写されるという仮説を検証するため、H23年度に下記の成果を得た。(1)100kb以下の短い遺伝子の転写の波の観測:前年度クロマチン免疫沈降(ChIP)に使用可能なPol II抗体を同定したので、さらに調整したDNAを次世代シーケンサー(ChIP-seq)で解読して活性型、非活性型毎に正確なゲノム上局在を観察した。(2)Chromatin Conformation Capture(3C)によるクロマチン構造変化の観察:刺激特異的なファクトリーの存在を裏付けるため3Cに基づくActivated Chromatin Trap(ACT)-Seq法を開発しTNFαによって誘導される遺伝子と相互作用する遺伝子群を同定した(投稿中)。さらに網羅的なクロマチン相互作用解析(chromatin interaction analysis using paired-end tag sequencing:ChIA-PET)に成功し、内皮細胞においてPol IIを介したクロマチン構造を観察することができた。(3)RNAポリメレースII複合体に含まれる蛋白成分の同定:内皮細胞を用いたてPol II抗体による免疫沈降産物のプロテオミクス解析に成功し転写装置を構成する蛋白質のリストを作成することが出来た。(4)転写におけるエピゲノム修飾の役割:エピゲノム修飾の一つであるコヒーシンをノックダウンした細胞においてChIP-SeqやChIA-PETを行ったところ、転写の波の局在や、クロマチン相互作用が大きく変化することが明らかになり、クロマチンループの役割が重要であることが判った。H23年度はファクトリー仮説に基づく新しい転写メカニズム明らかにするための最終年度の研究推進に必要な手法の確立と予備データの取得に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来転写の波の観察に用いていたChIP-Chipから、クロマチン相互作用解析についてはChIP-Seq、ChIA-PETの手法、さらにプロテオミクス解析について予定通りの進捗を見ている。また、半網羅的クロマチン相互作用を用いた解析と、ヒストン修飾酵素であるJMJD1Aと誘導性転写の関係についてはそれぞれ結果をまとめて投稿にいたったことから、おおむね計画通りの進展を達成していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H23迄に新規に確立した手法である、ChIP-Seq、ChIA-PET、プロテオミクス解析を用いて、経時的観察を行い、.転写におけるエピゲノム修飾の役割を詳細に観測する予定である。さらに重要なエピゲノム修飾である、ヒストン修飾酵素やコヒーシンについては、発現量の介入実験をおこなって、炎症性刺激によって誘導される転写における意義を明らかにする。特にChIA-PETについては大量の検体が必要であり、今後経時的観察を実施するためには網羅的クロマチン相互作用解析自体を改良して、より少量検体からのでの解析を達成する必要がある。
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