研究課題
相同組換えは、DNAの二重鎖切断修復と遺伝的組換えに働く、ゲノムDNAの安定維持において重要な生命反応である。相同組換えの破綻は、細胞において染色体異常を引き起こすことが知られており、二重鎖切断によって誘起される発がんや、遺伝的組換え異常による不妊症発症の原因となる。ヒトにおける相同組換え経路では多数のタンパク質が働いていると考えられているが、いまだ多くの未同定な因子群が存在している。そこで本研究では、相同組換えにおいて働く新規のタンパク質を同定し、その生化学的機能および立体構造を明らかにすることで、相同組換え素過程の反応機構の解明を目指す。本年度では、まず、先行研究により得ている相同組換え因子候補群の情報から解析対象としてヒトEVL、GEMIN2、およびSPF45などを選定し、それら相同組換え因子候補をリコンビナントタンパク質として精製した。そして、それらの機能を生化学的解析によって検討した結果、以下のことが明らかになった。まずEVLに関して、これまで当研究グループによって明らかにされていた、相同組換え中心酵素RAD51のDNA組換え反応の活性化機能に加えて、EVLがトポイソメラーゼと直接相互作用し、環状単鎖DNAをカテネーションする活性を有することを発見した。次に、ヒトGEMIN2がRAD51と直接相互作用して、相同組換え修復を活性化する新規の因子であることを明らかにした。さらに、ショウジョウバエやアラビドプシスにおいて相同組換えへの関与が指摘されていたSPF45のヒトホモログを精製し、ヒトSPF45が組換え中間体であるHolliday構造特異的に結合するDNA結合タンパク質であることを明らかにした。これらの結果は、相同組換え反応の分子機構解明のための重要な知見を与えた。
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