研究概要 |
本年度は、昨年度に行った連鎖解析の結果より運動失調発症と強い連鎖があると推定される約10Mbps領域の全ゲノム解析を行うための準備として、Wt確定マウス、hetero確定マウス、運動失調発症マウスの全10個体よりゲノムDNAの抽出を行った。次いで、全ゲノムより対象領域のみを抽出して濃縮するために、Agilent社のSureselectシステムを設計・作製し、これを用いて対象領域の抽出・濃縮を行った。次年度にこの抽出試料についてゲノム解析を行う予定である。 C57BLとの交雑系において、発症前個体のGenotypingを行い、三叉神経、脊髄神経の解析を行ったところ、生後8日目まではGenotypeによる違いを認められなかったが、9日目になるとhomo個体では神経線維に多数の膨隆部が生じており、NF-200の蓄積が認められた。電子顕微鏡で観察したところ、膨隆した末梢突起がシュワン細胞に取り込まれているが、髄鞘が未形成のものも形成途中のものもあった。また、9日目では核周部にNF-200は蓄積されていないが、13日目には蓄積が始まっており変性が核周部にまで及んでいると考えられた。これらのことより、症状が出現する28日目頃よりも遙かに以前の9日目から神経の変性が始まっているのが明らかとなった。 交雑系において見かけ正常をGenotypingによってWtとheteroに区別し、さらにhomo(異常発症個体)を用いて、4,8,12,16週における肝臓と腎臓の鉄代謝関連遺伝子の発現を調べたところ、homo個体で発現の認められない遺伝子はなかったが、Fth1, Slc11a1, Cpは4Wではhomoで高く、その後はhomoで減少し、Hamp, Trfr2, Alas2-v1は全般に減少し、Tfrcはわずかに増加しているのが認められた。
|