研究課題
〔検討内容〕次世代シークエンス技術を用い乳癌の遺伝子異常を探索する目的で、本年度はまずゲノムコピー数と遺伝子発現の解析結果から乳癌を大まかに5分類し、シークエンス解析する症例の選択を行った。3検体を選び、DNAのエクソンキャプチャーライブラリー調製とシークエンス解析のパイロット実験を行った。原発腫瘍とその乳腺非腫瘍部、およびリンパ節転移腫瘍のDNAを3検体ずつと、正常リンパ節DNA1検体の計10サンプルを選択した。原発腫瘍と乳腺非腫瘍部のDNAは凍結検体から、リンパ節転移腫瘍と正常リンパ節のDNAはメタノール固定パラフィン包埋切片から抽出した微量DNAを用いた。エクソンキャプチャー法の最適化とシークエンスデータの適切な情報処理方法を検討した。〔結果〕一塩基配列変化(SNV : single nucleotide variation)の候補リストを作成した。原発腫瘍3検体においてアミノ酸置換を生じる遺伝子塩基置換またはスプライシング部位における塩基置換を56遺伝子に、リンパ節転移腫瘍3検体においては107遺伝子に検出した。サンガー法によるキャピラリーシークエンスを行い、それら候補SNVについての検証実験を実施するとともに、個別の乳癌の性質決定に重要と考えられる変異遺伝子候補の調査を実施中である。〔意義〕技術的な検討項目として微量アーカイブDNA試料を用いてのエクソンシークエンスを行った。全ゲノムシークエンスの情報処理方法を参考にしながらエクソンシークエンスに適した情報処理解析手法の検討を行った。〔重要性〕貴重な臨床材料を用いたシークエンス解析は今後シークエンスコストの低下に伴って必要性が増す技術であり、微量検体を用いての試験は重要な検討事項である。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Oncogene
巻: 29 ページ: 4671-4681
DOI:0.1038/onc.217