研究概要 |
本研究では、シロイヌナズナの核ゲノムを人工的に再構成させ、系統として確立するとともに、結果として起こる遺伝子発現の変化を詳細に解析することを目的とする。そのため、シロイヌナズナにLoxP配列を導入した形質転換体を作成し、Creリコンビナーゼを発現する個体との交配により、配列特異的な組換えを誘発する系の確立を目指す。 2つのLoxPサイトをもつバイナリーベクターWiscDS-LoxPの形質転換系統とAc転移酵素発現個体とを交配しDS-LoxP-DSの転移を誘発した。転移した位置をTAIL-PCRで解析し、染色体上にマップした。さらに、LoxPを1つ含むコンストラクト(pBlox, pBloxCreとpBarlx)を構築し、形質転換体を作成した。これらのうち、pBlox2-7は2番染色体短腕に、pBarlx1-2は1番染色体上腕にそれぞれLoxPが挿入されていることがわかり、現在Creリコンビナーゼ遺伝子の導入により相互転座を誘発している。また、pBarlx3-6は1番染色体の下腕末端に、pBox1-4は5番染色体の上腕にLoxPが挿入されていた。これらを交配後、Creリコンビナーゼ遺伝子の導入によって相互端座を誘発したところ、葉がぎざぎざになるという異常形態が現れた。この形質(のこぎり状葉serrated leaves)に係わる遺伝子は7種(AT2G23760, AT2G27100, AT3G51060, AT4G32700, AT4G36260, AT4G36870, AT5G37055)知られているが、相互転座に関与する染色体上の遺伝子は、AT5G37055しかない。しかし、この遺伝子の位置は転座ポイント(AT5G24500)から約6.3 Mb離れていることから、AT5G37055が直接破壊されたとは考えにくい。クロマチン構造の変化なども含めて現在原因を探っている。
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