【変異原処理によるiol変異株の作出】イノシトールを炭素源として利用できなくなる細胞が増殖できないことを利用した変異株濃縮、いわゆるペニシリンスクリーニングによって目的変異株PS8を作出した。さらに、枯草菌ゲノム機能解析の際に確立した良質RNAを調製する技術をGeobacillus kaustophilusに適応して転写解析を行った。その結果、イノシトール脱水素酵素をコードすることが予想されるiolG1-iolG3の3パラログはイノシトールによって誘導される一つの転写単位に乗っており、また変異株PS8ではこの転写が消失しているためにイノシトールを利用できなくなることが分かった。 【イノシトール分解系遺伝子機能解析】イノシトール脱水素酵素をコードすることが予想されるiolG1-iolG3の3パラログそれぞれをクローン化精製して酵素学的性質を明確にした。それぞれのパラログは、実際に好熱性のイノシトール脱水素酵素をコードしており、補酵素や基質の特異性などそれぞれに特徴があることが明確となった。今期導入した高性能遠心機はこの研究を実施するうえで功を奏した。 【生物情報学的な視点からの転写調節因子の候補絞り込み】東京農大の吉川博文教授との共同研究により、PS8のドラフトゲノム解析を実施した結果、4か所の非同義置換が検出され、これらのいずれかがiolG1-iolG3のパラログの発現消失の原因であることが示唆された。連携研究者である高見博士、加えて英国ニューキャッスル大のAnil Wipat教授の協力を得ながら遺伝子情報学的に実際の実験対象とする変異点の選定を進めている。逆遺伝学解析実施のために、Geobacillus kaustophilusの遺伝子操作技術についても開発を進めている。
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