研究課題/領域番号 |
22310130
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉田 健一 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20230732)
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キーワード | Geobacillus kaustophilus / inositol / Bacillus subtilis |
研究概要 |
【変異原処理によるio1変異株の作出】昨年度に作出したイノシトールを利用できなくなった変異株PS8について、イノシトールを唯一の炭素源とする培地での経代培養を繰り返し、サプレッサー変異株を得た。そのうち独立した10株についてゲノム配列を解析した結果、9株については全て同じ遺伝子の翻訳低下がiol遺伝子群の転写復活に関わることが示唆された。残る1株については別の変異が関与していると示唆され調査継続中である。 【イノシトール分解系遺伝子機能解析】昨年度までに耐熱性イノシトール脱水素酵素をコードすることが判明したiolGl-iolG3それぞれを削除する解析を実行に移した。この逆遺伝学解析に必要なGKの遺伝子操作技術の開発はほぼ完了した。(これに先行する形質転換法の開発については論文投稿中。遺伝子削除技術についても別論文を準備中。)iolG1については削除変異体の作成が達成され、現在残る2遺伝子の削除を継続している。これらが揃い次第、生育温度の変化に対する適応にイノシトイール分解系が関わるか否か検証を進める予定である。iolGl-iolG3の発現および機能同定に関する研究成果の発表については国際会議と日本農芸化学会にて発表した。それぞれ性質の異なるiolG1-iolG3の3遺伝子が同時に発現することによって、イノシトール異性体相互変換が細胞内で生じることをメタボローム解析によって見出した。 【生物情報学的な視点からの転写調節因子の候補絞り込み】連携研究者である高見博士の協力を得ながら遺伝子情報学的に実際の実験対象とする変異点の選定を進めた。上記の変異原処理によるiol変異株とそのサプレッサー変異株の解析より示唆されたiol遺伝子群の復活に影響する遺伝子は枯草菌Crhに相当するタンパク質をコードすることが判明し、PS8におけるiol発現不全はカタボライト抑制と関連する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該好熱菌GKのイノシトール分解系について着実に遺伝子機能を同定し、その生理的意義を明らかする目標に向けてほぼ計画通りに推移している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画はほぼ順調に推移しており大きな計画変更は必要ない。GKの遺伝子操作技術の開発が達成されたので、当面は目的遺伝子の削除株のラインアップを目指し、これにより最大の目標であるGKの好熱性とイノシトール代謝の関連を明らかにする。iol遺伝子の転写調節についてカタボライト抑制の関与が見出されたことは意外な展開であるが非常に興味深い結果であり、更なる変異株の作出を視野にさらに掘り下げる予定である。
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