死海という高塩濃度のもとで生育する酸素発生型光合成生物ラン藻Aphanothece halophyticaの塩ストレス適応機構を解明し、その成果を塩・乾燥に強い植物の開発に生かすことを目的とする。申請者達は、このラン藻は通常のF-type H^+-ATPaseとともにF-typeのNa^+-ATPaseと思われる遺伝子をもつことをみいだした。Aphanothece halophyticaの新規F-type ATPase遺伝子を単離し、F-type ATPaseをもたない大腸菌の変異株DK8にプラスミドの形で導入した。新規F-type Ap-ATPaseが変異株DK8中で発現していることをHisタグ抗体で確認した。このAp-ATPaseを部分精製し、これがATPの加水分解活性、合成活性を持つことを明らかにし、論文として発表した。 Aphanothece halophyticaが新規のABCタイプのベタイントランスポーター遺伝子を持っていることが明らかになった。これには3つの遺伝子(betABC-A、betABC-B、betABC-C)が関与すると思われるが、オペロンを形成していない。これらを単離し、ベタインの合成・取り込み遺伝子を欠損した変異株MK13を用いて機能を調べている。 ラン藻のアミノ酸トランスポーターの遺伝子は、AnabaenaとSynechocystis sp PCC 6803について報告されたが、遺伝子の相同性、トランスポーターの性質(基質)がラン藻により異なり今後の研究が必要である。Aphanothece halophyticaはABCタイプの中性アミノ酸トランスポーターNI (NatA、NatB、NatC、NatD、NatE)を持つことが明らかになった。これら遺伝子を単離し、大腸菌のグリシン取り込み欠損株(JW4166、すでに所有している)に導入しその性質を調べている。
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