研究概要 |
昨年度は一昨年度から引き続き、小分子酸化酵素 cytochrome P450の基質スクリーニングおよび基質特異性検出法の開発を行い、P450が基質を酸化する際にNAD(P)Hから生成するNAD(P)+を検出すべく、NAD(P)+と選択的に反応して1,7-ナフチリジン-1(7H)-オン型蛍光色素を生成するメチルケトン型プローブの開発に取り組んだ。数十種類のメチルケトン類をスクリーニングした結果、ある種のメチルケトン(化合物A)とNAD+から生成する化合物が良好な蛍光特性(励起・蛍光極大波長、および蛍光量子収率)を示すことを見いだした。そこで、各種P450の基質を含む20種類の小分子を、P450と還元酵素系、およびNAD(P)Hを含む96ウェルプレート内でそれぞれ反応させ、生成する NAD(P)+ を化合物Aで検出した結果、基質が含まれていたウェルでのみ強い蛍光が観察された。この結果から、化合物Aを用いてP450の基質と非基質を明確に見分けるアッセイ系の基礎が確立できた(算出されたZ'値 = 0.9:Z'値とは、ハイスループットスクリーニングアッセイ系の質を評価する指標であり、この値は1に近い程アッセイの質が高く、0.5 以上でハイスループットスクリーニングが可能であるとされている)。更に、NADH 由来の吸光度・蛍光を検出する手法やアセトフェノンを利用するNAD(P)+定量法などの既存の手法と比較した結果、今回開発した手法は特に高い感度とZ'値を持つことが分かった。
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