脱窒菌などは、酸素を使わず硝酸を利用する嫌気呼吸をおこなうことができる。脱窒を担う酵素群のなかで一酸化窒素を亜酸化窒素(N2O)に還元する膜タンパク質が一酸化窒素還元酵素(NOR)である。NORは好気呼吸の末端酸化酵素であるシトクロムcオキシダーゼ(CcO)とアミノ酸配列の相同性が見られることなどから、NORはCcOの祖先分子であるとみなされており、呼吸酵素の分子進化の観点からも興味深い。本研究ではNORやCcOの機能発現の鍵となる気体分子複合体の結晶構造解析から、呼吸機能の進化の仕組みを解明することを目的としている。気体分子複合体の結晶構造解析には比較的高分解能の回折が得られる良質な結晶が必須となる。そこで平成24年度は、高分解能化を目指し細胞内の膜環境に類似した環境中で膜蛋白質の局所濃度を増加させ結晶を得るLipidic Cubic Phase法を検討した。この手法はNORのみならず、当研究室で進めている他の脱窒関連の膜蛋白質の結晶化・構造解析にも有効と思われる。また、結晶の高分解能化にはより多くの結晶化条件のスクリーニングが必要となるため、NORの発現条件を再検討しWTや期待分子複合体の安定化が期待できるE512AやK597A変異体の大腸菌による発現量を増加させることができた。
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