研究概要 |
1.ケージドプライマーの開発 (1)光分解性保護基で修飾したホスホロアミダイトモノマーを開発することが出来れば,PCRによりケージドプラスミドDNAを容易に合成することが可能となる。そこでまず,核酸塩基への光分解性保護基の導入法を最適化した。その結果,デオキシグアノシン(dG)の環外のアミノ基にNVOC基を導入できること,高い光反応性を持つと考えられるBmcmoc基をdCの環外のアミノ基に導入できることを明らかにした。(2)合成したケージドヌクレオシドは,350nmの紫外光照射によって,元のデオキシヌクレオシドを生成することを確認した。(3)光分解性保護基で修飾したプライマーを用いて,ケージドプラスミドDNAを調製する実験系を構築した。 2.塩基配列選択的ケージング試剤の開発 DNAやRNAのケージド化合物を合成するために,塩基配列を認識して狙った位置を修飾できるケージング試剤の開発を目指した。(1)DNAの塩基配列を認識するための6-mer PNA,および,DNAのリン酸結合と共有結合を作るためのジアゾメチル基を持つ新しいケージング試薬,PNA-Bhc-diazoの合成に成功した。(2)合成したPNA-Bhc-diazoを用いて,PNA結合配列を含む80-merのssDNAをケージングできること,PNA-Bhc基がPNA結合配列近傍に結合すること,さらに350nm光照射でアンケージングされることを,機器分析と酵素反応を利用して確認した。(3)PNA結合配列を挿入したプラスミドDNAを用いて,哺乳動物細胞内で発現するルシフェラーゼの定量でケージング反応の有無を確認する実験系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画に設定した研究項目は,ケージドプライマーの開発と塩基配列選択的ケージング試剤の開発である。ケージドプライマーを合成するためのケージドモノマー合成と,ケージドプラスミドDNAを調製するための実験系の構築に成功した。また,2本鎖DNAを塩基配列選択的にケージングする試薬を開発することができた。しかし,哺乳動物個体内で働くことを確かめるまでには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ケージドプライマーを用いる方法と,塩基配列選択的ケージング試薬を用いる方法で,モデル生物個体内で用いることができるケージドDNAの開発を推進する。運動する個体で光制御する場合,狙った場所を精度よく光刺激することは困難である。よって,個体での光制御を実現するためには,ケージド化合物を狙った細胞にターゲッティングする手法開発が必須である。そこで,低分子量機能性分子のケージド化合物とタグープローブシステムを組み合わせて,ターゲッティング可能か検討する。
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