研究課題/領域番号 |
22310142
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
島本 啓子 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所, 主幹研究員 (70235638)
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キーワード | 糖脂質 / 膜タンパク質 / 糖鎖 / 生体膜 / 膜挿入 / 有機合成 / 生活性物質 / 生理活性機構 |
研究概要 |
新たな膜タンパク質挿入因子である大腸菌由来の糖脂質MPIaseの膜挿入活性の最小機能単位を推定するため、三つの糖がつながった糖鎖部位とリン脂質部位の合成に着手し、糖鎖の効率的な縮合法とリン脂質合成条件の検討を行った。具体的には、N-アセチルグルコサミンは4位を選択的に遊離とし、他をベンジル基で保護してアクセプターとした。マンノサミン部の構築は二糖合成の際に得た知見に基づき、まず2位アシル基の隣接基関与を利用してβグルコシドを得た後に、2位に立体反転を伴ってアジドを導入した。この際、2位アシル基がアセチルの場合には1位への転位反応が起こったが、ベンゾイル基にすることで副反応を抑えることができた。三糖を結合させた後では二つのアジド基を還元させることが難しかったので、立体障害の少ないManNAc-GlcNAcの二糖の段階でアジド基の還元を行うことで、目的のアミノ体を得ることができるようになった。4-アジドフコースを結合させて三糖体を得た後に、フコース内のアジド基も還元した。次いで、マンノサミン部分をウロン酸に酸化して三糖の保護体を得た。最終的にはこの保護体を脂質部とを結合させることになるが、一旦この段階で脱保護して各種NMRを測定して、天然物と比較したところ、良い一致を示し、三糖の結合様式を確定することができた。 一方、リン脂質部の合成条件を検討するためのモデルとして、グルコサミンピロリン酸エステルを合成した。市販のグリセロールのアセトニド保護体にアシル基を導入した後、1位をリン酸化した。糖リン酸部は、グルコサミンのベンジル保護体をリン酸化し、先の脂質部リン酸との縮合条件を検討し、中程度の収率ではあるが目的のピロリン酸体を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成は順調に進み、合成三糖のNMRとの比較から、天然物の糖鎖構造を確定させることができた。また、天然物からの化学変換に基づいた構造活性相関研究も進めており、活性機構についても新たな知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
糖脂質部の構造は確定させることができたので、構造活性相関研究に移る。また、生合成基質候補となる糖ヌクレオチドやその誘導体の合成を行い、生合成経路を探る。今年度中に、構造決定と構造活性相関についての論文をまとめる予定である。
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