研究課題/領域番号 |
22310143
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鷲谷 いづみ 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40191738)
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研究分担者 |
石井 潤 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特任助教 (30420227)
西原 昇吾 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特任研究員 (90569625)
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キーワード | 淡水魚類 / 二枚貝 / 共生関係 / 複合影響 / 協働 / 侵略的外来種 / 水生生物 / 氾濫原ハビタット |
研究概要 |
(1)北海道朱太川水系において、黒松内町および漁業関係者と協力して取得した、ヤマメに寄生する二枚貝であるカワシンジュガイ(絶滅危惧II類)の分布データを解析した結果、本水系では順調に個体群の更新が行われていることと、分布の規定要因として、DO、砂の割合、流速が正に有意な効果をもつことが示された。また、本種の各個体群の繁殖ポテンシャルの大きさには、上流側の河川長、上流側の河川の分岐点の数、河床の安定性が正に有意な効果を持つことが示された。 (2)生物多様性の高いため池が残存する岩手県久保川流域において、生物多様性の高い110の池でもんどり型トラップ550個を設置し、地域と協働で4月~12月の毎週の排除が実施された結果、ウシガエル幼生22607頭、成体1039頭、新成体3332頭が捕獲された。一方、ゲンゴロウ、ガムシなどの中~大型の水生昆虫や在来カエル類(トウキョウダルマガエル、ツチガエル)の池あたりの確認個体数は前年の数倍以上に増加した。胃内容からはゲンゴロウなどの様々な水生生物が確認され、水生生物に及ぼす影響が示唆された。 (3)北海道朱太川水系の魚類相について、氾濫原湿地を含む多様なハビタットにおいて、網羅的に調査したところ、通し回遊魚の存在量が有意に多く、止水環境を利用する魚類の存在量は有意に少ないことが明らかになった。これは、当該水系において流程方向の連結性が健全に保たれている一方で、河川との連結性をもつ小規模な水域が含まれる氾濫原湿地が大規模に喪失していることを反映していると推察された。これらの小規模な水域の種多様性には、その面積と水深が正に有意な効果を持つことが示された。また、以上の結果を踏まえて、協働参加型調査に向けた魚類相図鑑を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
魚類と二枚貝との関係について、予定通り野外調査・データ解析を実施した。また、侵略的外来種の駆除実験とその効果の検証について、地域と連携し、予定通り駆除・調査を実施した。さらに、連続性のある氾濫原ハビタットの再生に向けて、協働参加型調査に利用するための魚類図鑑を作成した。本図鑑を用いて聞き取り調査を実施して有用性が確認できたため、来年度は本図鑑を用いて協働参加型調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
カワシンジュガイのメタ個体群構造と水系ネットワークとの関係について、当初予定していた遺伝解析の実施が難しくなったため、代替の手法として、個体群生態学的手法を用いて解析する。そのため、ネットワーク構造に関係する宿主(ヤマメ)の分散過程の詳細な検討とカワシンジュガイの繁殖成功に関する要因を調査する。また、地域との協働により、ウシガエル駆除および生き物調査を継続し、数年間の効果を検討する予定である。さらに、期間内に連続性のある氾濫原ハビタットの再生・回復実験に資する事業の実施が難しい見通しとなったため、将来の実施に向けてモニタリング手法を検討する。
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