研究課題/領域番号 |
22310145
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
岡部 貴美子 独立行政法人森林総合研究所, 森林昆虫研究領域, チーム長 (20353625)
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研究分担者 |
升屋 勇人 独立行政法人森林総合研究所, 森林微生物研究領域, 主任研究員 (70391183)
神崎 菜摘 独立行政法人森林総合研究所, 森林微生物研究領域, 主任研究員 (70435585)
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キーワード | ダニ / 菌 / 線虫 / 共生 / 便乗 / 昆虫 |
研究概要 |
便乗微小生物の多様性は便乗寄主の多様性と強く相関するという仮説を検証するために、便乗寄主ごとの便乗及び共生微生物の多様性を明らかにした。同一のランドスケープ内で土壌性のダニと、きのこ生息性のダニを比較したところ、それぞれの種構成は大きく異なり、共通種は46%程度だった。またきのこ性のダニは67%が便乗性だった。きのこのサイズ(バイオマス)が大きくなるほどダニ種数が増加する傾向があったが、きのこの種類ではサルノコシカケのような寿命の長いタイプのきのこで有意に種数が多かった。また昆虫が生息するきのこではダニの種数が有意に多いことがわかった。従ってこれらのダニはハビタットに特異的で、移動分散を特定のグループの昆虫に依存していることが示唆された。キクイムシに便乗するオフィオストマ科菌類や酵母、線虫の種類相は複雑で独自の種類相であり、未だ多くの未記載種を含んでいた。また、クワガタに関して、便乗者や、それに寄生する微生物の多様性調査を行った。この結果、国内産の8種類のクワガタムシより複数の未記載種を含む8種の線虫が確認され、これらの多くは細菌食性自由生活線虫であった。また便乗線虫には種特異性はほとんど見られなかったことから、比較的広い範囲のクワガタムシを媒介昆虫として利用していると考えられた。菌類についても未記載の複数種が含まれていることがわかった。これらのことは生物間相互作用に関する定量的評価を妨げる要因となると思われたが、保全対象を考慮する上で重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国各地で調査を行うと共に特定のプロットでは年変動を示すデータを収集し、ダニについては保全単位を明らかにするための定量化を行ったことから、計画通りに順調に伸展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
保全のためのハビタットのスケールを明らかにするために、微小生物の種の多様性維持に重要なマイクロハビタットの特性とその分布確率のデータがほぼ入手できたので、今後はこれらを解析する。さらにパッチ状のマイクロハビタットを利用するために不可欠な、便乗寄主の保全スケールを解明し、両者の情報から微小生物の保全に重要な基本単位の提言を行う。
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