研究課題
微小生物を保全するための「保全共生系単位」を解明し、生物多様性保全における共生系保全の重要性を明らかにするために研究を行った。各種キクイムシからの随伴菌の検出を行ったところ、糸状菌だけでなく酵母でも多様な随伴関係が成立していると考えられた。シデムシ随伴酵母はYallowia lipolyticaとその近縁群であり、さらには各種シデムシの随伴酵母の優占種はシデムシ種特異的な随伴関係が成立していると考えられた。また、各種シデムシから線虫の分離同定を行ったところ、亜社会性の種で、線虫保持率、保持種数とも非常に高く、自由生活者ではほとんど線虫の検出が見られないことが明らかになった。同様にシデムシ便乗ダニを調べたところ、亜社会性の種で種数個体数ともに多いことが分かった。これら共生生物は森林タイプによる明確な差がなかったことから、安定的なハビタットを利用する種で共生生物の多様性が高い傾向が示唆された。シデムシと一部の便乗ダニの間では相利共生が発見されているが、キクイムシやシデムシの便乗菌類、線虫類、ダニ類で高い便乗寄主特異性が認められたことから、これらの共生系が相利共生を基盤にしている可能性が示唆された。またキノコに生息するダニの種の多様性は、キノコのタイプと昆虫の有無と相関しており、キノコの大きさとは明確な関係が認められなかった。キノコに対する種特異性は不明であったが、枯死木に発生するキノコで種数が多かったことから、ダニの多様性保全には枯死木が安定的に供給される老齢林の保全が有効であることが示唆された。これらのことから、微小な生物にとって生息地の分断化はごく普通の状態と考えられ、分断化によるデメリットは便乗寄主などの共生生物によって補われていることが示唆された。従って一般には微小な生物の保全はより大型の共生生物のハビタット保全を行うことが有効であると考えられた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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