研究課題/領域番号 |
22310151
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊谷 樹一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20232382)
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研究分担者 |
黒崎 龍悟 福岡教育大学, 教育学部, 講師 (90512236)
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キーワード | 環境保全 / 住民グループ / 食料生産 / 水力発電 / 農村開発 / 共有 |
研究概要 |
地域の内発的発展に資する理念と方法の構築を目指して、タンザニアの農村で実践的な活動に取り組んできた。 活動は住民グループが主導し、彼らとの対話・協議をとおして方針の実施可能性・妥当性・将来性を検討するとともに、住民の反応や意識の変化について参与観察した。基礎調査から、対象地域が抱える主要な課題を、地域経済の向上と環境保全の両立にむけた生業-社会-環境の複合化と定めた。計画の大きな枠組みを1.食料の安定生産、2.新たな経済活動の起業、3.環境保全として、平成22年度以降、それぞれの枠組みを横断するいくつかの活動を実践してきた。おもな活動は以下のとおりである。 (1)政府が推進する農業の近代化の妥当性を検討するため、トウモロコシの改良品種と化学肥料を用いた栽培試験を実施した。その結果、増収は認められたものの、経費がかかりすぎて採算が合わないことが分かった。(2)イネ科作物に寄生する雑草Striga sp.がひろまりつつあるため、トウモロコシの代替作物としてジャガイモを導入・試作し、それが新たなカロリー源となりうることを確認した。(3)住民グループにメスの子牛を供与し、このウシの管理・利用をとおして「共有」の意義について協議した。(4)牛囲いを整備して堆肥の生産を始めた。この試みは、化学肥料に代わる養分供給源を意図している。(5)穀物価格の季節変動に対処するため、穀倉に貯蔵した穀物を端境期に廉価配給した。そのことで、住民は穀物貯蔵の意義を強く認識することになった。(6)村を流れる川に小水力発電施設を設置した。まだ発電には至っていないが、この施設の建設や設置をとおして、村のエネルギー問題、共有財産の管理、集水域涵養林の重要性などに関する意識を高めるとともに、それを新たな経済活動として位置づけるねらいがある。(7)薪炭材・建材・食料・環境保全・財源のためにタケや有用樹木を導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究で実施してきた実践的な活動は、住民が地域の抱える課題とその原因を認識し、自ら解決策を構想・実施しうる体制の構築を目指している。住民グループの結成から、問題の抽出、解決策の立案と実施可能性の検討、実践活動とその評価まで、一連の取り組みをとおして、住民は活動相互の連関を強く意識しながら問題群を総合的に捉えるようになってきている。こうした住民の主体的な参加を導いた要因に関する分析も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現地での実践活動は、政策や環境の変化といった予期せぬ外部要因によって変更を余儀なくされることがある。本研究においても、いくつかの活動は当初の予定よりも遅れてはいるが、そうした障害をどのように克服するかを検討することもこの研究の重要な課題であり、おおむね順調に進んでいる。本年度は、諸活動の結果を出し、それを評価しながら、どのようにそれを維持・継続していくかという次の課題に進んでいく。また、一連の成果をまとめ、自治体をはじめとする現地の関係機関に活動の全過程を公表するつもりである。
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