研究課題/領域番号 |
22310153
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
押川 文子 京都大学, 地域研究統合情報センター, 教授 (30280605)
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研究分担者 |
日下部 達哉 広島大学, 教育開発国際協力研究センター, 准教授 (70534072)
佐々木 宏 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (50322780)
牛尾 直行 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (10302358)
伊藤 高弘 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (20547054)
南出 和余 桃山学院大学, 国際教養学部, 講師 (80456780)
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キーワード | インド / バングラデシュ / 学歴 / 雇用 |
研究概要 |
教育制度やその改革に着目した平成22年度研究の成果を土台に、2年目となる平成23年度は、おもに学歴形成と経済機会(雇用)の接続に焦点をあてて、海外調査と研究会・ワークショップを実施した。 (1)海外調査:計画に基づいて、以下の調査を実施した。 デリーの低所得者層における就職活動(学校から仕事への移行)の実態(村山)、デリーの低所得者層向け低授業料私立学校の制度的位置づけ(協力者・小原)、デリーのリキシャ引きの教育水準と農村家族への教育送金の現状(協力者・黒崎)、デリーの路上生活経験のある若者の進路(協力者・針塚)、北インド地方都市のMBAカレッジ卒業生の進路(佐々木)、北インド農村部(ビハール州)における学歴形成の現状(押川、伊藤)、南インド都市近郊農村における教育と職業のアクセスの30年間の変化(協力者・柳沢)、南インド都市部カレッジにおけるマイノリティ出身学生の学歴形成(牛尾)、バングラデシュ農村部の若者の学歴と都市移動の関係(南出)、バングラデシュ農村部における学歴形成の変化(日下部) (2)研究会は3回開催し、うち第2回(2011年10月)には、人間文化研究機構「現代インド」広島大学拠点等との共催により、「南アジアの学校教育と職業の接続-人々の教育への期待に経済発展は応えているか-」と題したワークショップを開催し、経済学や教育学の立場からのゲストスピーカー2名を交えて議論を展開した。 以上の現地調査と議論を通して、今までのところ、以下の3点が明らかとなっている。(1)「質」の高い教育と学歴・資格を求める動きが中下層や低所得層にも拡大しており、その結果、低所得者層のための低授業料私立学校やローカルなMBAカレッジ、マイノリティのための教育機関などが急増している。(2)(1)の状況を反映して、「無償義務教育に関する子どもの権利法-RTE」や学校認証評価制度、高等教育管理行政改革などが導入され、政策行政面での対応が加速化している。(3)学歴と雇用の接続については地域差が大きく、地元資本による非農業部門雇用機会が比較的順調に形成されている南インドでは、中等教育程度でも学歴と地元雇用がある程度直結しているが、北インドやバングラデシュでは、地元雇用の機会が限られ、むしろ都市部や海外への労働移動が目立つため、「適度な学歴」が意味を成して機能する構造がみられない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人々の教育熱に応じるように急増する中下層を対象とした各学校の現状およびそれを統制する制度の実態に着目しながら、学歴形成と雇用の接続の現状を明らかにすることで、「教育発展と社会変容」という本研究目的に忠実かつ具体的に取り組んでいると言える。調査の本筋はほぼ終了しており、成果のまとめに入れる段階まできている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成24年度は、これまでの調査と議論をまとめて、成果出版の準備および公開ワークショップの開催を目指している。本研究では主にインドとバングラデシュを対象としてきたが、成果の公開においては、少しでも「南アジア」を網羅的に検討するために、パキスタン研究者の協力を仰ぎたいと考えている。
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