研究課題/領域番号 |
22310161
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
木本 喜美子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (50127651)
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研究分担者 |
千葉 悦子 福島大学, 行政政策学類, 教授 (30217244)
宮下 さおり 九州産業大学, 国際文化学部, 准教授 (30447586)
高橋 準 福島大学, 行政政策学類, 教授 (70272094)
中澤 高志 明治大学, 経営学部, 教授 (70404358)
勝俣 達也 専修大学, 人間科学部, 准教授 (40635679)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 女性労働 / ジェンダー / 女性職 / 女性労働史 |
研究概要 |
平成24年度は、調査地として選定した福井県勝山市の織物業に従事してきた方々のインタビュー調査に主力を注いで続行した。また研究会内部でのデータ分析の機会を重ねることによって調査のまとめの方向性を検討するとともに、ハンガリーで開催された国際学会での学会報告によって成果の一部についての発信を行った。具体的には、次のとおりである。 ① まず、勝山市の元織物女工および男工についてのインタビュー調査を継続した。調査地訪問の回を重ねるごとにネットワークが広がり、市内の複数にわたる大手織物工場に勤めていた元女工および元男工の調査を重ねることが可能となった。 ② 大手織物業とは異なる存在形態を有する「小機屋」と呼ばれる中小規模の織物工場の経営主およびおかみへの調査を継続的に推進した。また「農家機屋」と呼ばれる市内の北部地域の織物工場の経営主への紹介を得て、インタビューを実施した。 ③ 勝山市における高学歴女性であり、かつ織物女工の子育てに関わりをもっていた保育関係者への聞き取りをスタートさせた。企業内保育所および公立保育所にまたがる保育関係者のインタビューを重ねるとともに、上記の②に関連する小機屋のおかみが保育にどの程度コミットし、女工の暮らしぶりをどのように見ていたかについてのインタビューにも着手した。 ④ 本研究と共通する課題意識をもつ海外の研究者に発信するために、European Feminist Research Conferenceに参加し、ラウンドテーブルにおいて研究成果の発信を行った(平成24年5月ヨーロッパ中央大学・ブダペスト)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究会の積み重ねによって、<女性労働と家族>の再構成に関する既存研究のフォローおよび必要な基本枠組みについての検討作業の見通しがおおむねついているということができる。また実態調査については、インフォーマントのネットワークが次々に拡大したことにより、最終年度にあたる平成25年度の現地調査で追跡しうる対象者の見通しが十分に得られている。とりわけ本研究の主たる対象者にあたる織物業の元女工については、ほぼ30ケースの詳細なインタビューが達成されており、今後の分析のために十分なデータが得られてきているといえる。このほか、元女工をとりまく元男工、保育関係者、中小の機屋経営主についても系統的にアプローチすることができており、平成25年度の最終調査によってより十分なデータの取得が可能になる見込みである。 対象地域の奥行きの深さにはまり込むかたちでの調査研究が続いており、いまだとりまとめの作業段階に入るのがやや遅れているが、平成25年秋の学会報告をめざして、われわれの豊富な調査事例のまとめの方向性を明確化したいと考えている。 また大企業を擁する織物業地帯に特徴的な、寮生活や集団就職の実態についても多くの証言が得られており、この面からも女性労働の地域特性への接近が可能となると思われる。平成19年度から平成21年度の科研費(基盤(B)「戦後日本における『女性職』の形成・定着過程に関する実証的研究」:研究代表者・木本喜美子)において接近した福島県川俣町は小機屋のみの地域であり、通勤女工のみの地域であったのに対して、本研究の対象地はこれとは大きく異なる地域性を有し、女性労働の析出の仕方も異なるという点では好対照をなすことにあらためて気づかされている。こうした点からみても、順調な展開であるということができる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成25年度は、最終調査を夏に組む予定である。調査対象は、織物業の元女工およびその他の関係者、機業場経営者およびその妻への聞き取りを軸とし、このほか、保育関係者および自治体関係機関、労働組合等への聞き取りと資料収集も合わせて行うものとする。 (2)当該地域の特徴として集団就職者の受け入れがあったことが平成24年度調査から明確になったことから、集団就職者に関するデータを収集するとともに、集団就職を経て出身地にもどった事例に関するインタビューを付加するものとする。対象地域としては、九州の旧産炭地(筑豊地域)を想定している。 (3)これまで収集した調査データおよび文献資料を共有し、これに分析を加えつつ、調査課題をより明確にする。またこれまでの研究会の成果を統合し、<女性労働と家族>の史的再構成についての仮説を、女性労働政策の変遷、保育政策の変遷、地域労働市場論、農村工業化と地域労働市場の観点から修正・補強する研究会をさらに重ねていく。 (4)こうした成果を踏まえて平成25年秋の学会大会で報告を行い、国内の研究者からの視点とコメントを採り入れていく。さらにまた、本研究と共通する課題意識をもつ海外の研究者からレビューを受ける機会をもち、研究成果のとりまとめに生かしていく予定である。
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