「農」の哲学の構築─学際的な拡がりの中で

2012 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 22320002
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 鬼頭 秀一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (40169892)
• 研究分担者: 日鷹 一雅 愛媛大学, 農学部, 准教授 (00222240) ; 桝潟 俊子 淑徳大学, コミュニティ政策学部, 教授 (00255150) ; 丸山 康司 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20316334) ; 澤登 早苗 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (20318877) ; 富田 涼都 静岡大学, 農学部, 助教 (20568274) ; 桐原 健真 東北大学, 文学研究科, 助教 (70396414) ; 森岡 正博 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (80192780) ; 竹之内 裕文 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (90374876)
• 研究期間 (年度): 2010-04-01 – 2013-03-31
• キーワード: 環境倫理 / 生命倫理 / 食の倫理 / 有機農業 / 放射線被曝 / 倫理的実践 / ３．１１ / 非貨幣的経済

研究概要

3.11以後の福島の状況が、「農」の本質的なあり方を考えるために重要であるという判断から、引き続き福島における復興の問題、低線量被曝の問題に集約して研究を進めてきた。最終年度になり、改めて、「農」の哲学的な本質について議論を深め、農の哲学の中間報告書であるエッセィ集をwebで公開した。また、今までの研究の成果をまとめて最終報告書を作成して出版する予定で検討を重ねており2013年度中にはとりまとめられる予定である。いくつか論点となったことを列挙しておく。まず、「農」の問題は人が生きるということ密接に関連しており、単なる食料生産に限定されない。逆に、放射線被曝下において、植物工場が構想されることは，問題を純粋な形の食糧生産システムとしての「農」をとらえていることになり、対極となる倫理的実践としての農ということがあぶり出されてくる。「すまう」「土地に根ざす」ということに重要な本質がある。また、「農」は、生命倫理と環境倫理の統合という枠組みの中にとらえることが出来、well-being他者とともにすまうということにも関連している。その意味で福祉という枠組みとの関連がある。3.11の復興の問題において、拠点開発的な産業復興が主体となり、人の視点、コミュニティの視点からの全体の枠組みが構想されていないこととも関連がある。特に東北の被災地においては、「農」ということも、遊び仕事も含めた形でよた広くとらえる必要があり、非貨幣的な経済の存在が重要である。福島における、「農」の「被害」の実態もそこにある。「除染」などによって農作物に放射性物質を移行させないような試みがなされているが、「農」の営みが、単に出荷する農作物が安全であればいいということではなく、わらの利用も含めたより広範な営みとして捕らえる支店が必要である。現在を捉える哲学の根本的な問題の本質がまさにここにあることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)

理由

24年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

24年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] 福島原発由来の低線量被曝問題にかかわる科学者の倫理 (2013)
  • 著者名/発表者名: 鬼頭秀一
  • 雑誌名: FGF+TGF(編）『原発災害とアカ デミズム』（合同出版） 巻: 1 ページ: 80-104
  • 査読あり
• [雑誌論文] なぜ順応的管理はうまくいかないのか―自然再生事業における 順応的管理の「失敗」から考える (2013)
  • 著者名/発表者名: 富田涼都
  • 雑誌名: 宮内泰介編『なぜ環境保全はうまくいかな いのか―現場から考える「順応的ガバナンス」の可能性』（新泉社） 巻: 1 ページ: 30-47
  • 査読あり
• [雑誌論文] 三方湖をめぐる人と自然のかかわり (2013)
  • 著者名/発表者名: 富田涼都
  • 雑誌名: ナチュラリスト 巻: 23 ページ: 8
• [雑誌論文] まるごと成長しまるごと死んでいく自然の権利 (2013)
  • 著者名/発表者名: 森岡正博゛
  • 雑誌名: 粟屋 剛 ・金森 修 編集 『生命倫理のフロンティア 第20巻』丸善 巻: 20 ページ: 97－114
  • 査読あり
• [雑誌論文] 自然順応的な村の資源保全と『伝統』の位相ー福島県檜枝岐村のサンショウウオ漁と人びとの暮らし (2013)
  • 著者名/発表者名: 関礼子
  • 雑誌名: 宮内泰介編『なぜ環境保全はうまくいかないのか―現場から考える「順応的ガバナンス」の可能性』新泉社 巻: 1 ページ: 148－171
  • 査読あり
• [雑誌論文] 有機農業の『産業化』と『ローカル』への覚醒 (2013)
  • 著者名/発表者名: 桝潟俊子
  • 雑誌名: 淑徳大学大学院総合福祉研究科研究紀要 巻: 20 ページ: 1－16
• [雑誌論文] 改めて地域自給を考える (2013)
  • 著者名/発表者名: 桝潟俊子
  • 雑誌名: 井口隆史・桝潟俊子編 『地域自給とネットワーク』コモンズ 巻: 1 ページ: 印刷中
  • 査読あり
• [雑誌論文] 持続可能性と順応的ガバナンス (2013)
  • 著者名/発表者名: 丸山康司
  • 雑誌名: 宮内泰介編『なぜ環境保全はうまくいかないのか―現場から考える「順応的ガバナンス」の可能性』新泉社 巻: 1 ページ: 295－317
  • 査読あり
• [雑誌論文] 風力発電の社会的受容 (2012)
  • 著者名/発表者名: 本巣芽美・丸山康司・飯田誠・荒川忠一
  • 雑誌名: 環境社会学会研究 巻: 18巻 ページ: 190-198
  • 査読あり
• [雑誌論文] 民俗学における学問の「制度化」とは何か━━自然科学の「制度化」のな かから考える (2012)
  • 著者名/発表者名: 鬼頭秀一
  • 雑誌名: 岩本通弥・菅豊・中村淳（編）『民俗学の可能性を拓く━━「野の学問」 とアカデミズム』（青弓社） 巻: 1 ページ: 240-264
  • 査読あり
• [雑誌論文] 新潟水俣病問題の現状と課題―阿賀野川の人と暮らしと新潟水俣病 (2012)
  • 著者名/発表者名: 関礼子
  • 雑誌名: 花田昌宣・原田正純編『水俣学講義第5集』日本評論社 巻: 5 ページ: 123－152
  • 査読あり
• [雑誌論文] 流域の『自治』をデザインする―”絆”をつなぐフィールドミュージアムの来歴 (2012)
  • 著者名/発表者名: 関礼子
  • 雑誌名: 桑子敏雄・千代章一郎編『感性のフィールドワーク』東信堂 巻: 1 ページ: 67－87
  • 査読あり
• [雑誌論文] 特集「水田生物群集」にあたって (2012)
  • 著者名/発表者名: 日鷹一雅・大塚泰介
  • 雑誌名: 日本生態学会誌 巻: 62 ページ: 155－156
  • 査読あり
• [雑誌論文] (2) 日鷹一雅 (2012) ギルド構造から垣間見た水田群集の実際的食物網と潜在的食物網 (2012)
  • 著者名/発表者名: 日鷹一雅
  • 雑誌名: 日本生態学会誌 巻: 62 ページ: 187－197
  • 査読あり
• [雑誌論文] 風力発電の社会受容性の課題と解決策 (2012)
  • 著者名/発表者名: 丸山康司
  • 雑誌名: 風力エネルギー 巻: 104 ページ: 169－173
  • 査読あり
• [学会発表] 原発災害とリスクコミュニケーション (2013)
  • 著者名/発表者名: 鬼頭秀一
  • 学会等名: 飯舘村放射能エコロジー研究会・東京シンポジウム
  • 発表場所: 東京都・東大農学部弥生講堂一条ホール
  • 年月日: 2013-03-30
• [学会発表] 自然再生事業を巡る多様な価値と環境ガバナンス (2012)
  • 著者名/発表者名: 富田涼都
  • 学会等名: 野生生物保護学会第18回大会
  • 発表場所: 宇都宮市・宇都宮大学峠キャンパス
  • 年月日: 2012-11-17
• [学会発表] Activities of Local Society toward Community Power (2012)
  • 著者名/発表者名: Yasushi Maruyama
  • 学会等名: 1th World Wind Energy Conference 2012
  • 発表場所: Bonn, Germany
  • 年月日: 2012-07-06
• [学会発表] 震災以降の環境倫理と環境経営の課題 ─3.11以後の社会と技術を捉える枠組みの転換の中で─
  • 著者名/発表者名: 鬼頭秀一
  • 学会等名: 環境経営学会第12回大会
  • 発表場所: 東京都・跡見学園女子大学
  • 招待講演
• [学会発表] 3.11以後の地域づくりの課題―自然との包括的な関係を築くために
  • 著者名/発表者名: 鬼頭秀一
  • 学会等名: 第3回千曲川・信濃川復権の会総会
  • 発表場所: 新潟県津南町・津南文化センター大ホール
  • 招待講演
• [学会発表] リスクコミュニケーションと専門家の役割
  • 著者名/発表者名: 鬼頭秀一
  • 学会等名: 飯舘から福島と日本を感が刈る―復興支援に関する医学と人文社会学からのアプローチ
  • 発表場所: 福島市・福島テルサ
  • 招待講演
• [学会発表] 中立的な立場を取ろうとする専門家がリスクコミュニケーションに失敗するのはどうしてか―政策論的立場からの脱却の必要性と地を這う視点の獲得の必要性
  • 著者名/発表者名: 鬼頭秀一
  • 学会等名: 科学技術社会論学会第10回年次大会
  • 発表場所: 葉山町・総合研究大学院大学
  • 招待講演
• [学会発表] 在来作物を巡る人と自然：その保全と課題
  • 著者名/発表者名: 富田涼都
  • 学会等名: 日本生態学会第60回大 会,
  • 発表場所: 静岡市・グランシップ静岡
• [学会発表] 農村都市混在地域におけるスクミリンゴガイを中心とした外来種認知度調査ー中学生を対象としたアンケート調査から
  • 著者名/発表者名: 村上 裕（愛媛県中予地方局）・日鷹一雅
  • 学会等名: 農村計画学会2013年度春期大会学術研究発表（ポスターセッション）
  • 発表場所: 東京都・東京大学
• [学会発表] 「アレロパシーを利用した有機農業、特にヘアリーベッチとハッショウマメの今後の利用について」「有機農業現場における新技術利用の可能性－農業現場と研究機関のコラボレーション」
  • 著者名/発表者名: 日鷹一雅
  • 学会等名: 第13回 日本有機農業学会（東京）大会・総会
  • 発表場所: 東京都・東京大学
• [学会発表] 農業・農村の多様性は生物多様性に貢献するか？
  • 著者名/発表者名: 日鷹一雅
  • 学会等名: 第６０回日本生態学会静岡大会
  • 発表場所: 静岡市・グランシップ静岡
• [学会発表] 新たな理論的枠組み「総合的外来種駆除」に向けて
  • 著者名/発表者名: 日鷹一雅
  • 学会等名: 第６０回日本生態学会静岡大会
  • 発表場所: 静岡市・グランシップ静岡
• [学会発表] ポスト開発主義としての再生可能エネルギー事業の環境社会学
  • 著者名/発表者名: 城戸誠 丸山康司 柏谷至 藤公晴
  • 学会等名: 環境社会学会第45回大会
  • 発表場所: 秋田県大潟村・サンルーラル大潟
• [学会発表] Social acceptance of Wind Energy and Social Experiment of Community Power in Japan
  • 著者名/発表者名: Yasushi Maruyama, Makoto Nishikido
  • 学会等名: 1th World Wind Energy Conference 2012
  • 発表場所: Bonn, Germany
• [学会発表] 市民参加型地域調査の必要性と可能性
  • 著者名/発表者名: 丸山康司
  • 学会等名: 滋賀大学環境総合研究 センター第9回年次シンポジウム,
  • 発表場所: 彦根市・コラボしが21