研究課題
一ノ瀬正樹は、「死の形而上学」について単著において相応の整理を成し遂げた。また「自然選択」と「遺伝的浮動」との区分について、および責任概念について、検討を進めた。加えて、英国Oxford大学にてThe 2010 Uehiro Lecturerを務めたことも特筆すべき成果である。松永澄夫は、自己意識と感情、感覚や欲求という形式での体の意識、知覚という形式での体の外の事象の意識、これら三者間の関係を価値論的視点で研究し、また価値概念と意味概念との不可分の関係を、言葉の観点と時間推移の観点の双方から究明した。天野正幸は、実体概念を確立したアリストテレスの『形而上学』における実体概念を再検討することによって、物質・生命・人格に関しての理解を深める作業を進めた。高山守は、ドイツ近現代哲学を中心に、人間の「自由」がどのように哲学的に論じうるのかを探った。自然科学的な法則性もしくは総じて物質性と、自由との相互浸透的関連性を明確にし、関連性としての場を家族のうちに見いだす作業を進めた。榊原哲也は、フッサールの時間意識ならびに他者の問題に取り組み、また自然科学的・医学的な見方に対して現象学的ケア理論を対照させ、現象学的看護理論を概観するとともに、生命と人格を育むケアについて現象学的考察を行った。鈴木泉は、近世哲学を素材としながら方法論的側面に焦点をあわせ研究を進め、自然学の形而上学的基礎づけというデカルトの思索の意義とその限界を確認しつつ、ホッブスと共に自然主義を貫徹させたスピノザの思索の意義を、とりわけその「共通概念」論と必然主義の解明を通して明らかにすることに努めた。信原幸弘は、脳科学の成果を自由、意志、合理性に関する哲学的問題の考察に役立てるための原理的な考察を行い、脳のあり方から心のあり方を導き出すには法則的な捉え方と合理的な捉え方のギャップが大きな障害となり、解釈を介さない直接的な導出は困難であることを確認した。朝倉友海は、おもに近世形而上学および東アジアの現代哲学における生命思想を題材にして、生命の概念と人格および他者の概念との関係についての考察を行った。特に、「個別性」概念が存在論のなかではたす役割についての解明を進めた。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (16件) 図書 (9件)
論集
巻: 29 ページ: 23-39
巻: 第29号 ページ: 1-21
看護研究
巻: 第44巻第1号 ページ: 5-16
文化看護学会誌
巻: 第3巻第1号 ページ: 50-53
Bulletin of Death and Life Studies
巻: Vol.7 ページ: 119-137
中公クラシッタス・土岐邦夫・小西嘉四郎訳『ヒューム人性論』解説
巻: 所収 ページ: 1-24
『戦争と戦没者をめぐる死生学』、東京大学大学院人文社会系研究科グローバルCOE「死生学の展開と組織化」ワークショップ報告論集
ページ: 106-114
On Time-New Contributions to the Husserlian Phenomenology of Time, Phaenomenologica 197(Dieter Lohmar and Ichiro Yamaguchi (eds.))
ページ: 251-271
Philosophy, Phenomenology, Sciences. Essays in Commemoration of Edmund Husserl, Phaenomenologica 200(Carlo Iema, Hanne Jacobs, and Filip Mattens (eds.))
ページ: 679-694
流砂
巻: 第3号 ページ: 97-116