研究課題
第1年度には、研究の第一段階と位置づけたネヴィイーム(「預言者」)に属する個々の諸文書、前半のヨシュア記、士師記、サムエル記、列王記と後半のイザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書、十二小預言書に関して、死海文書が照射する新しい視座からの精査を分担して行った。イザヤ書に関してはほぼ完全な写本である1QIsaiah^aとそれより古い1QIsaiah^bの新版が漸く年度末に補遺として出版され、今後の新しい研究が可能になった。エレミヤ書に関しては、マソラ本文と七十人訳ギリシア語聖書との構成上の乖離が大きく、その生成過程と伝承過程について本文研究が焦眉の急であるが、エレミヤ書は預言書研究のみならず、その編集問題は、前半の歴史書研究、殊にいわゆる申命記史家によるバビロン捕囚期の記述とペルシア時代の復興問題に関する記述とも密接に関わりがあり、両方の側からの連携研究が今後の課題となることが判明してきた。その他の預言書全てについて死海文書は新しい資料を提供し、従来の本文研究の再検討を迫っていることを確認したので、今後これらの作業が集中して行なわれる。平成23年3月8日(立教大学)の研究集会で、個々の研究者の1年間の研究成果の発表と、平成24年度に計画されている国際研究集会での研究発表の分野の分担責任と招聘者の選考を行った。また、この研究集会の直前に前回の基盤研究(B)の成果が『古代世界におけるモーセ五書の伝承』(京都大学学術出版会)として出版されたので、これを再検討しながら、今後の研究を進めることとなった。連携研究者:月本昭男 立教大学・文学部・教授、山我哲雄 北星学園大学・文学研究科・教授、山田重郎 筑波大学・人文社会科学研究科・教授、勝村弘也 神戸松蔭女子学院大学・文学部・教授
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