研究課題/領域番号 |
22320021
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
杉浦 秀一 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (50196713)
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研究分担者 |
北見 諭 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (00298118)
貝澤 哉 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30247267)
山田 吉二郎 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (40091516)
根村 亮 新潟工科大学, 工学部, 教授 (40242367)
兎内 勇津流 北海道大学, スラブ研究センター, 准教授 (50271672)
下里 俊行 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (80262393)
坂庭 淳史 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (80329044)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ロシア / プラトニズム / アレクサンドル1世 / フェスラー / 哲学詩 / ロシア正教 / ベルジャーエフ / ロシア・ルネサンス |
研究概要 |
プラトニズムの歴史的背景としてアレクサンドル1世の宗教教育改革を18世紀末-19世紀初頭のフランスやプロイセンとの比較で分析した結果、プロイセン型改革の企図に対して、国教としての特権的地位の喪失を危惧したロシア正教会からの反発をうけて改革は中途半端で課題を後代に残す結果になったことを指摘した。またペテルブルク神学大学招聘教授フェスラーの授業概要とそれへの批判を分析した結果、1814年の神学大学学則でのプラトン条項は、フェスラーの「プラトニズム」を弾劾した大主教フェオフィラクトとその感覚・経験主義哲学に対抗した3人の実力者(ペテルブルク府主教アムヴロシイ、理神論者スペランスキイ、神秘主義者ゴリーツィン)のアンチテーゼの最大公約数的象徴であったことを指摘した。愛智会に代表される「ロシア哲学詩」というジャンルの帰趨を分析した結果、それがイデア論と詩人追放論という二律背反を抱え込んでいたため実際の詩作は抑制されることになるが、これこそ1820-40年代の「余計者の文学」の典型であることを指摘した。 20世紀初頭のロシア正教神学の動向を検討した結果、同時代のリッチュル神学に対する両面価値的な応答として心情的道徳主義に限定されない、現世での具体的な「神の国」の樹立への志向がキリスト教プラトニズムの枠組を通じて形成されたが、それはソロヴィヨフの自由神政制の積極的評価をもたらし、既存の教会聖職者、国家教会制、資本主義的文明を批判するものであったことを指摘した。また、ベルジャーエフの思想をプラトニズムの文脈で分析した結果、物自体の世界の認識可能性と物自体の世界のコスモス性というロシア・ルネサンス思想の主張は、一見すればベルジャーエフのカント評価、存在論批判と不整合であるが、彼の思想における創造を通じたコスモスへの志向という点ではロシア・ルネサンス思想の枠組内で理解可能であることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、ロシア・プラトニズムについて、19世紀初頭から20世紀初頭までバランスよく分析対象を選定し、ジャンルの面でも宗教、文学、政治思想、文化史など幅広い分析対象を選定していたが、本年度は、これまで検討されてこなかったアレクサンドル1世の宗教政策、神学大学招聘教授フェスラー、哲学詩、20世紀初頭の神学、ベルジャーエフが検討対象となり、当初の計画通り、ロシア・プラトニズムに関する新たな知見を得ることができたからである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、各研究分担者が担当した時代と分野に関して各自の研究成果の概要をまとめたうえで、研究代表者が総括的な評価と課題を解明し、9月に研究成果を発表するシンポジウムを公開で開催することによって、外部からのレビューを受ける。このシンポジウムの結果を吟味した上で、最終的な成果と今後の課題についてまとめる予定である。なお、必要に応じて補足的な海外での資料調査・分析と、海外の研究者によるレビューを受ける。
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