研究課題
中世絵巻に描かれた多様な「場」を、「型」として捉え、描かれた「場」や「もの」と、画中人物の身分や階層、出来事の性格との関係性を明らかにし、描き分けの根拠・論理を探究するという本科研の目的に添って、初年度にあたる平成22年の研究は、三つの観点から以下のように進めた。第一に、広範に中世絵巻の図像収集に努め、「型」の抽出と分析をおこなった。特に、絵巻に描かれた建築空間と環境について、建築史を専門とする研究分担者(小沢朝江氏)らとの討議に力を注ぎ、絵巻特有の建築空間の描写方法に関し、参加者(美術史研究者・文学研究者を含む)の共通認識の構築に努めた。その結果、絵巻に描かれた建築空間は、現実の再現的描写ではなく、建物の方位の転換、省略、反復といった手法を駆使していることが判明した。第二に、本科研のテーマにかかわる参加者の個別研究を持ち寄り、絵巻研究の視点と方法を豊かにするための検討を重ねた。特に、年度末(3月14日)には、絵巻研究における詞書書風の捉え方について、亀井若菜氏による「粉河寺縁起絵巻」に関する報告に基づき、専門家として松原茂氏(根津美術館)を招き、多くの有益な知見、コメントを得た。第三に、図版入手が困難、かつ重要な中世絵巻の作品調査を実施した。本年度は、特に異界の描写を含む絵巻を優先した。「地蔵菩薩霊験記」(根津美術館)「星光寺縁起絵巻」(東京国立博物館)、また震災の影響で23年度に延期したが「九相死絵巻」(九州国立博物館)にて調査を実施し、異界、死後の世界を構成する建築や環境、そしてそこで用いられる「もの」の描写を精査し、「本朝」の場面との異同を中心に考察、討議を重ねた。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)
美術運動史研究会ニュース
巻: 117 ページ: 1-5
住宅総合研究財団研究論文集
巻: 37号 ページ: 145-155
美術研究
巻: 403号 ページ: 25-57
国文学論考
巻: 47号 ページ: 81-95
巻: 37号 ページ: 297-307
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告集『身体/表象-通文化的研究』(池田忍編)
巻: 213 ページ: i-viii
国立歴史民俗博物館研究報告(特集:共同研究「紀州徳川家伝来楽器コレクションの研究」
巻: 166 ページ: 81-104
服飾文化共同研究報告2010
ページ: 69-74
日本建築学会計画系論文集
巻: 651号 ページ: 1209-1217