研究課題/領域番号 |
22320026
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
池田 忍 千葉大学, 普遍教育センター, 教授 (90272286)
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研究分担者 |
小澤 朝江 東海大学, 工学部, 教授 (70212587)
亀井 若菜 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (30276050)
久保 男 千葉大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教 (10323437)
柴 佳世乃 千葉大学, 文学部, 教授 (60235562)
土屋 貴裕 独立行政法人国立文化財機構, 東京国立博物館・学芸研究部調査研究課絵画・彫刻室, 研究員 (40509163)
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キーワード | 美術史 / 文学一般 / 日本史 / 絵巻 / ジェンダー |
研究概要 |
中世絵巻に描かれた多様な「場」を、「型」として捉え、描かれた「場」や「もの」と、画中人物の身分や階層、出来事の性格との関係性を明らかにし、描き分けの根拠・論理を探究するという本科研の目的に添って、平成23年度は、中世絵巻を横断的に検討・考察する独自の検索システム(「型からみる絵巻検索システムver2.0」)を構築、完成した。 これは、主題分類、時代や絵師などによらず絵巻作品を、段毎に、(1)「人の行為の型」(2)「空間・環境の型」で検索する点で、他にはない特徴を有する。また、「型」として抽出した場面を構成する主要モチーフをキーワードとして入力し、「型」と関連づけて検索することによって、(1)「人の行為の型」×(2)「空間の型」×モチーフ(キーワード)で、横断的な画面検索が可能になった。本年度の研究は、多様な「型」を含む中世絵巻をサンプルとして選び、ジャンル(主題)や絵師(時代)を超えた絵巻の画面構成の近似や参照関係を、検索システムを利用することで浮かび上がらせることを目指し、頻繁に検討会を重ねた。 また、絵巻の詞と絵との対応関係を中心にしたデータペースの構築に実績を上げてきた楊暁捷氏(カルガリー大学教授・国際日本研究センター客員、「WIKIemaki」作成者)を研究会に招き(3月29日)、構築中の検索システムについて助言を得た。また、絵巻研究における画像と研究視点・成果の共有化(公開)をめぐって、意見交換をおこなった。その結果、今後は、研究者向けにとどまらず、学生および一般の美術・歴史に関心を持つ人々に対し、新たな絵巻の見方を提示するツールとして検索システムを改良する上での課題を明確にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度内の完成を目標としていた「型からみる絵巻検索システムver2.0」が完成した。研究者、および学生を含む一教育・普及目的の公開に向けて、課題を踏まえ検討中であり、公開シンポジウムの開催は、24年度(最終年度)となった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に変更はない。6月を目処に、すでに完成した「型からみる絵巻検索システムvel2.0」の問題点を修正する。特に、検索の要となる絵巻の中から抽出した「人の行為の型」と「空間の型」、および各型を構成する主要モチーフ(キーワード)の一覧を、先行研究を参照しながら完成する。 12月上旬を目処に入力作業の継続作業を終え、検索システムの特性を生かした各自の分析・研究成果を蓄積、それを持ち寄って、8月、9月、11月には集中的に研究会を開催し、意見交換をおこなう。その上で、12月に公開シンポジウムを実施し、検索システムの公開を視野に入れた利用方針を確定する。終了時には、シンポジウムにおける討議を踏まえ、本科研で構築した検索システムを絵巻研究者のみならず、学生に利用場所を限定して公開、実際に使用してもらって、その機能や効果を検証する。計画に無理はなく、シンポジウムの招待者も決定しているので、以上の推進方策に従って研究をおこなう。
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