研究課題/領域番号 |
22320032
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
岡田 健 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, センター長 (40194352)
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研究分担者 |
鉾井 修一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80111938)
小椋 大輔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60283868)
津村 宏臣 同志社大学, 文化情報学部, 准教授 (40376934)
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キーワード | 敦煌 / 壁画 / 色彩 / 劣化メカニズム / 環境 / 化学変化 / 解析 / 復原 |
研究概要 |
平成23年度は、8月に敦煌莫高窟第285窟に足場を組んで天井部の保存状態、環境、分析、美術史に関する各班合同による現地調査を実施し、平成24年3月までに調査結果の整理と分析を行い、研究成果取りまとめを行う、という計画を立てた。しかし敦煌研究院の都合によって分析調査を11月に実施するよう求められ、さらに実施の直前になって敦煌側分析調査者が対応できない事態となり、調査日程を変更せざるを得なくなった。この結果、8月に京都大学チームによる環境調査を実施し、11月に東京文化財研究所チーム(保存科学・修復技術・美術史)による状態調査・美術史調査を実施した。残された調査については2月までに次年度への研究費繰越申請を行い許可されたため、平成24年度の実施となった。 平成24年度における前年度分経費による分析調査は、当初計画では11月に実施の予定であったが、8月に足場を必要としない壁面について一部の調査を実施し、11月に備えていたところ、再び直前になって一部の機材に不具合があるという理由で日程の変更を求められ、1月にようやく天井部分についての調査実現にこぎ着けた。 分析調査は、引き続き携帯型蛍光X線検出器(XRF)による彩色材料の元素同定と光学顕微鏡による目視観察を続けるとともに、分光光度計による材質特性の把握に努めた。特に今年度はこれまでの課題であった有機の彩色材料に関して、分光光度計による波長特性をもとにその材料の検討を本格的に進めたことが、研究上の大きな進歩となった。平成24年度分経費による調査と合わせて、XRF660点、顕微鏡165点、分光光度計257点についてのデータを得て、年度末までにそれらを整理・分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に敦煌側の事情により延期せざるを得なくなった第285窟の調査について、平成24年度分の研究経費を合わせて集中的に人員を派遣したため、まだ若干の取り残しはあるものの、おおむね必要とされる調査を完了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成22年度以来3年間にわたる第285窟における丹念な調査によって、同窟内部全面における必要なデータの収集をほぼ完了しつつある。とくに分析調査に関しては、周到な目視観察との関係で実施しており、調査参加者は壁画を単なる物質的な分析対象としてではなく有機的な表現構造である絵画としての視点を備えてきた。平成24年度経費によって実施している美術史的調査、環境調査、劣化状態調査との統合によって、研究計画の実現が十分に期待できる状態になりつつある。
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