まず、昨年度に行った現地調査旅行を元に、ローマとその周辺における芸術家同士の交流に焦点を合わせつつ、データ・ベースの充実を図った。また、本年度は、個別に現地調査と資料収集を精力的に行った。新たな調査結果のデータ・ベース入力も精力的に進め、最終的には、各担当者が製作した個別のデータ・ベースを統合したところ、合計2996件ものデータ件数となった。このデータを研究に活用するためには横断検索が不可欠であるため、キーワードの一括検索できるようにデータ・ベースの操作体系と概観を一新した。なお、このデータ・ベースは、現在、今後の一般公開に向けて「閲覧版」の最終調整に入っている(5月末アップ予定)。各担当者は最終成果の発表に向けて、本課題の総まとめとしての論文を執筆中である。 本研究課題の研究成果は、竹林舎から2013年秋に研究論文集として「近代都市と芸術シリーズ」第一巻『ローマ:外国人芸術家たちの都(仮題)』として発刊されることとなった。研究代表者はすでに原稿提出済みであり、各担当者も近々提出予定である。この研究論文集は、3月末の研究報告会で討論した内容が活かされるだろう。この報告会では、ローマにおける外国人同士の国際的交流の新たな事実も明らかとなったことから、論文集として出版されることで、今後の19世紀美術史に一石を投じるに違いない。竹林舎で発刊するシリーズは、今後、全8巻で19世紀ヨーロッパの都市と芸術を扱う予定である。この企画自体の発端が本研究課題であり、ローマだけでなくヨーロッパ全体を見通す研究論文集へと展開するきっかけとなった。これまでの国別の美術史研究の限界を打破する目的であった本研究課題の試みは、当初のローマという枠組みを超え、都市環境が果たした芸術への役割を検討する上での重要な研究書シリーズを生み出すこととなり、研究代表者の予想を超えた成果を導き出してくれたのである。
|