研究課題/領域番号 |
22320036
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
市川 明 大阪大学, 文学研究科, 教授 (00151465)
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研究分担者 |
秋葉 裕一 早稲田大学, 理工学部, 教授 (10063801)
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キーワード | ブレヒト / ヘレーネ・ヴァイゲル / 叙事詩的演劇 / 異化効果 / フリッツ・ラング / 井上ひさし / 歌舞伎 / ハイナー・ミュラー |
研究概要 |
本年度の主要な研究課題はアメリカにおけるブレヒトであり、アメリカ亡命中のブレヒトの仕事を探ることであった。5月に市川と海外研究協力者のルケージーがロサンゼルスに調査に出かけた。南カリフォルニア大学の図書館や、研究者、文化人との交流からブレヒトのハリウッドでの活動について新たな発見があった。市川はF.ラング監督の映画『死刑執行人もまた死す』のシナリオがブレヒトによって書かれたものであることを立証し、12月の学会シンポジウムで発表、紀要に論文を掲載した。アメリカでの俳優ロートンとの共同作業については、重要課題として継続して研究していく。 4月にはソウル国立大学校で開かれたシンポジウム「ブレヒト±ミュラー」に市川と研究協力者のクノップが招かれ、クノップがブレヒトの俳優術に関して、市川がハイナー・ミュラーについての講演を行った。韓国との交流は続き、2012年度にもシンポジウムを行う。市川は『母』と能の関係についても探り、ベルリンでの調査からブレヒトが得た歌舞伎、能からの影響が、彼の叙事詩的演劇の確立に大きな役割を果たしたことを、ドイツの出版社から出版する研究書の中で明らかにした。(現在印刷中)『家庭教師』や『原ファウスト』の上演から、ブレヒトの俳優術、劇作法と東ドイツの主流を成した社会主義リアリズムとの違いを探る研究を今年度始めたが、2012年8月のゲーテ協会の講演で成果を報告する予定である。分担研究者の秋葉は引き続き、日本におけるブレヒト劇の上演を研究するとともに、『過去の克服』のテーマで千田是也や井上ひさしとブレヒトの関係を探っている。ブレヒト、ヴァイゲルを知る演劇人のインタビューは続けて2012年度も行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外への調査は順調に進み、成果も上がっている。国際シンポジウムや国内学会のシンポジウムで発表し、それをもとにした研究論文が日本語とドイツ語で国内外の雑誌に掲載されている。今年度はさらに大きな成果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
10月に韓国でブレヒトとベンヤミンをめぐる国際シンポに市川が招待されており、芸術論、俳優論について報告する。11月に中国で、市川、秋葉、クノップ、ルケージーが参加するブレヒトとベルリーナー-アンサンブルに関するシンポジウムで中国の研究者との交流も可能である。日本演劇学会でのシンポジウムも企画中である。海外でのさまざまな成果を欧文の研究成果報告書としてまとめる準備に入っている。今年度は劇作家・演出家ブレヒトと俳優の共同作業を緻密に研究し、追っていきたい。東ドイツにおけるブレヒト像についても新しい資料をもとに研究したい。
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