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2011 年度 実績報告書

近代ギリシャ絵画(19世紀から両大戦間期)研究ーヨーロッパの影響と伝統の再編

研究課題

研究課題/領域番号 22320041
研究機関共立女子大学

研究代表者

木戸 雅子  共立女子大学, 国際学部, 教授 (10204934)

研究分担者 鈴木 杜幾子  明治学院大学, 文学部, 教授 (70162972)
大原 まゆみ  明治学院大学, 文学部, 教授 (70185362)
馬淵 明子  日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (30114656)
キーワードギリシャ近代絵画史 / ギリシャ近・現代史 / 両大戦間期文化 / ギリシャ・フランス・ドイツ / 19・20世紀絵画史 / 近現代フランス絵画 / トルコ / ポスト・ビザンティン美術史
研究概要

本年度の現地調査は主にテサロニキを中心に北部ギリシャにおける近代絵画史の史料収集を行った。テサロニキは、ビザンティン帝国第二の都市としてビザンティン時代の教会が多く残り、ビザンティン絵画史において貴重な壁画、モザイク画の重要なモニュメントが町中にある。新しく建築されたビザンティン美術館も充実している。今もビザンティン文化の町としての色合いが濃い。そのため現在もテサロニキで活躍する芸術家たちの作品にはビザンティンの残照が強く表れる傾向にある。その中の中心的な画家として活躍するヤニス・ヴロス氏から直接に貴重な知見を得ることができた。アテネとテサロニキでは近代絵画の上でも文化土壌が大いに異なることが明らかになったことは興味深い。それによって近代ギリシャと一言片づけられない地方的相違がアテネとテサロニキには予想以上に存在している。今後その観点でももう一度本研究課題を見直す必要があろう。本調査との関係からイスタンブールにあるギリシャ正教会ヴァルトロメオ総主教に拝謁し日本人の視点からギリシャ近代におけるギリシャ人の視覚的伝統の継承とヨーロッパの絵画の受容についての研究の意義を話合う機会を得た。
研究分担者鈴木は、女性というジェンダー的マイノリティの身体表現が、近代フランス美術の成立にいかに貢献・関与しているかという視点から著書を上梓したが、その観点がギリシャ独立戦争関連のフランス美術を考察する過程で西欧美術の根幹をなす古代ギリシャへの憧憬がいかに独立前後の近代ギリシャというマイノリティ文化に対する感情と屈折しつつ絡み合っていたかという問題に、構造的共通点を見出し研究を進展させている。大原は、ミュンヘン、ウィーンでミュンヘンアカデミーで学んだ画家たちやオーストリアとギリシャの美術交流について新たな史料を発掘した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

近代ギリシャ人にとっての近代とは何だったのか、ヨーロッパの影響と彼らの本来の伝統のビザンティン的表象を格に研究する。従来はヨーロッパ側からオリエントの一部としての視点から語られるだけであったが、ギリシャ側から見たヨーロッパやヨーロッパを通して知った「古代ギリシャ」そしてビザンティンの伝統への執着などを通してギリシャが経験した近代化の仮定と結果を読み解くという目的に対し、本音度は、ビザンティン帝国陥落後もイスタンブールに残ったギリシャ正教会の総主教府を訪れ、総主教との面会とそれに対するギリシャ人の考え方を直接知る機会を得たことは当初の計画以上に本研究が進展している証である。

今後の研究の推進方策

過去2年間で現地調査を4回行い基本的な資料収集、ギリシャの研究者や画家たちへのインタビュー及び研究会を行い研究グループの各自の研究分野からギリシャ近代絵画史を見直す作業を積み重ねてきた。その結果フランスにおけるギリシャ人画家の活動(馬淵分担)、ミュンヘン、及びオーストリアにおける美術活動の動向(大原分担)などギリシャ国外でのギリシャ人の美術的活動を追うことができた。それと同時にその後のギリシャの現代美術の方向性か両大戦間期に形成される過程(木戸分担)が明らかになりつつある。その成果と本研究課題の前に行った研究課題で問題にしたギリシャ独立戦争以後のギリシャにおけるギリシャ人画家によるヨーロッパ絵画の受容とアイデンティティーの形成(鈴木分担)を含み、次年度にギリシャ人研究者を日本に招聘して日本の明治絵画におけるヨーロッパ絵画との出合いと比較するシンポジウムを開催する予定で準備を進めている。明治絵画史の専門家と議論することで今までにないギリシャ近代絵画史への視座を得ることができる貴重なシンポジウムになるはずである。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 午前コメントー西洋美術とジェンダー<視ることの制度>2012

    • 著者名/発表者名
      馬渕明子
    • 雑誌名

      言語文化

      巻: 29号 ページ: 193-196

  • [雑誌論文] ギリシャ:古代の精神からの再生2011

    • 著者名/発表者名
      マルガリティス、ヨルゴス(翻訳:大原まゆみ)
    • 雑誌名

      明治学院大学藝術学研究

      巻: 第21号 ページ: 27-44

  • [学会発表] Η χρληση των"Ερμηνειων ζωγραψικη〓"στην ιαπωνικη ζωγραψικλη-Ομοιοτητε〓 και διαψορε〓 με την Ερμηνεια του Διονυσιου εκ Φουρνα2011

    • 著者名/発表者名
      木戸雅子
    • 学会等名
      Απο το βυζαντιο στη Νεωτερη Εποχη:Παραδοση και Ανανεωση στην Τεχνη
    • 発表場所
      ビザンティン美術館(アテネ)(招待講演)
    • 年月日
      2011-05-12
  • [図書] フランス革命の身体表象-ジェンダーからみた200年の遺産2013

    • 著者名/発表者名
      鈴木杜幾子
    • 総ページ数
      354
    • 出版者
      東京大学出版
  • [図書] "Preface : La collection de Charles Cartier-Bresson et le Japonisme" in Un gout d'Extreme-Orient, Collection Charles Cartier-Bresson2011

    • 著者名/発表者名
      Mabuchi Akiko
    • 総ページ数
      125
    • 出版者
      Musee des Beaux-arts de Nancy
  • [図書] 「パリの日本美術コレクションの売立てについて」(別冊解説)フランス人コレクターの日本美術売立て目録(馬渕明子)2011

    • 著者名/発表者名
      馬渕明子
    • 総ページ数
      15
    • 出版者
      Musee des Beaux-arts de Nancy

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公開日: 2013-06-26  

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