初年度は、国内での資料収集、フィルムのデジタル変換などの資料作成、関連機材の調達など、研究全体の基盤を整備しながら、研究代表者、および研究分担者が、フランス、イギリス、ロシア、クロアチア、韓国に渡り、調査、文献収集を行うとともに、現地の研究者と情報交換し、体系的な文献のリスト化を依頼した。また、来日、あるいは長期滞在していたアメリカ、カナダ、オーストリア、オランダ、中国、クロアチア、フランスの研究者、キュレーター、映像作家らとも情報交換し、同じく情報交換とリスト化を依頼するとともに、研究計画に対するそれぞれの立場からの意見を求め、各地の多様な研究、上映状況を踏まえながら、2012年度のシンポジウムに向けた内容について議論した。同時に、国内のみならず各地でのシンポジウム、研究会、上映会の開催についても協議した。 それらと平行して、パリのシネマテーク・フランセーズでの若松孝二、足立正生特集、ソウル・アートシネマでの大島渚特集、クロアチアのフィルム・ミュテーションズ、東京都写真美術館の恵比寿映像祭などでの関連上映会、SOAS(ロンドン大学)などでの関連シンポジウムに参加し、現状の研究成果を部分的に報告しながら、『日本映画は生きている』シリーズを編纂し、日本映画研究全体の底上げを計るとともに、『1968年文化論』、鈴木清順、若松孝二らの発言集を刊行するなどした。また、国内外での60~70年代映画の再評価について、新聞や雑誌にも寄稿し、本研究計画の映画史的意義を学際以外に幅広く強調する機会に努めた。
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