25年度は本科研の最終年度である。従って、これまで行ってきた各所での寺院調査に関する成果を可能な範囲で公表していく事、及び以後の調査の継続と展開を図る事を主眼に研究活動を行った。 主な調査活動としては、随心院(京都市山科区)において5月に『別尊雑記』の調査・撮影を11日間、同じく7月に『伝授類聚鈔』の調査・撮影を10日間行った。これらは今後の当該分野における基本資料となるべく、近くPDF版電子書籍として公開する。安住院(岡山市)では年間18日間の調査を行った。中でも「安住院特別展観」を中世文学会(10月)と同時開催し、これまでの調査で明らかとなった資料群を広く学会に初公開した。西福寺(京都府綴喜郡)に関しては寺内調査5日間、研究会2回を行い、神道潅頂資料を中心とした調査・撮影を行った。これらは平成26年夏に国文学研究資料館での資料展示、12月に仏教文学会でのシンポジウムが決定しており、そこで成果の一部を公開する。その他、無動院(岡山県玉野市)では鉄眼版一切経の虫干し作業を主導し、後にその時注目された増吽僧正石棺に関する取材記事が山陽新聞(2014.1.19朝刊)に掲載されるに至った。国分寺(総社市)・覚城院(三豊市)は未だ聖教類の整理段階であるが、今後の目録化への準備を進めている。 その他数ヵ寺を加えて、年間55日間の現地調査をおこない、資料の調査・撮影・保存に努めた。またその成果は資料展示や電子媒体化を中心に随時公開する。加えて、これら各所の寺院経蔵の実体を明らかにしていくことで、今日的経蔵の意義・役割、歴史的変遷・位相を捉える為に、基本データたる書誌の収集、項目の整理、複数寺院データの統合を行っている。
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