研究課題/領域番号 |
22320063
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 広昭 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (40210471)
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研究分担者 |
湯浅 博雄 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30130842)
星埜 守之 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (10238743)
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キーワード | translation / transculturality / community |
研究概要 |
22年度に引き続いて、翻訳と文化横断性という視座から冷戦終結後の世界におけるポスト・コロニアルな文化状況がもたらしている問題系や現象の解明に集中的に取り組んだ。星埜はカリブ海アンティール諸島と太平洋のニューカレドニアにおけるクレオール文学の研究にとりくみ、とくにニューカレドニアについては、政治、経済、文化のあらゆる面でフランスやフランス語の大きな影響下にある現地の現代文学の状況の入念な調査を行ったうえで、現地の研究者を招聘し、講演会を開催、貴重な証言を日本に聴衆に伝えた(実施は24年度)。 山田は22年度は「同一者は他者か?」という国際シンポジウムを開催し、東アフリカやアラビア語圏における翻訳と現地語文学の問題の解明に取り組んだが、23年度は研究代表者として研究全体の組織化(とくに連携研究者の研究のとりまとめ)に意を用いつつ、当初からの課題である、国民国家的な共同体を最上位にあるものとみなす理念・信念に対抗して起こった連帯の思想であるアナキズム的なインターナショナリズムの運動と文学、芸術との関係について、共同体の問題を念頭におきつつ主としてフランスに事例を求め、フェネオン、ミルボー、ダリアンといった作家たちの再評価を目指して彼らの作品の検討を続行した。また狭義の専門であるヴァレリーの研究と翻訳の実践(『ヴァレリー集成IV』)にも本研究の趣旨は生かされている。 湯浅は〈翻訳〉の問題系と〈他者との関係〉の問題系がどのように交錯するのかという根底的なテーマについて、理論的な観点からの考察を行い、その成果を具体的な事例に則して展開したものを『翻訳のポイエーシス』という著書にまとめ、世に問うに至った。また連携研究者の田尻は、ロンドン大学より代表的なベケット研究者の一人であるギブソン教授を招聘し討議する中で、アイルランド文学の伝統との関連でベケットについての新たな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度に招聘予定であった数名の研究者の招聘を半年ほど順延せざるをえなかったが、それ以外はほぼ順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の成果を踏まえてさらに各自の研究テーマを深める。連携研究者との連絡を密にしつつ、最終年度は、論文(論文集)にまとめる作業を行う。
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