研究課題/領域番号 |
22320066
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
松村 剛 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00229535)
DAVID Courron 南山大学, 外国語学部, 准教授 (20308927)
真野 倫平 南山大学, 外国語学部, 教授 (30257232)
丸岡 高弘 南山大学, 外国語学部, 教授 (50199923)
一丸 禎子 学習院大学, 付置研究所, 講師 (80567313)
PERRONCEL Morvan 中京大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90339630)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マザリナード / デジタル・アーカイヴ / オンライン・コーパス / 17世紀フランス文学 / フランス史 / Mazarinades / 知の集積 / デジタル化 |
研究概要 |
本年度の最も大きな進展は、本研究によりデジタル化および検索が可能になった東京大学所蔵マザリナードコレクションのカタログをWeb上で公開できたことである。文献情報の追加も50%まで達成でき、本研究の次世代型コーパスはいよいよ実用の段階に入った。この進展にともない、コレクションの所有者である東京大学総合図書館と公開に伴う諸問題の解決について協議し、その協議内容は必ず、将来的に増加すると見込まれるWebにおける資料公開、人文研究の新しい方法論、ならびに研究環境の整備に役立てられるものと確信する。同時に、上記の課題に関しては、フランスの大学研究者、図書館関係者とも協議し、国際シンポジウムの準備を開始した。本研究の実現に関しては海外の研究者から常に驚きと称賛を寄せられているが、コーパスが完成度を増したことによって、本年度は我が国が新しい研究分野の開拓を実現したのだとの実感がより一層強く手ごたえとして感じられた。 もうひとつ特筆すべきことは、研究者の作業場となるだけでなく同時に広く一般にも公開されているこのコーパスを使って、教育現場への還元が具体化したことである。日本に言及しているマザリナード文書の現代語訳が学習院大学フランス語圏文化学科と明治学院大学フランス文学科の学生4名によって完成し、Web上で紹介された。これはフランスに先駆けて、日本人の大学生によるマザリナード文書の初めての現代語訳として歴史に残る事例となろう。さらに本年度はパリ第三大学だけでなく、ボルドー第三大学においても公開のセミナーを行い、より広い層に本研究が認知されるよう務め、ここにおいても昨年度以上の手ごたえと具体的な反響を得ている。本研究の過程は透明性を確保するためすべてWeb上に公開しているが、それは同時に本研究の認知度を高めるためにも役立っていると確信する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究はマザリナード文書の電子化とそれをコーパスとしてWeb上に公開することを核とし、このコーパスを中心とする新しい研究環境(知の集積方法や研究者コミュニティの創成等)を総合的に研究するものだ。今年で3年目にあたり、核となる電子コーパスがいよいよ実用段階に入ったことにより本研究計画のほぼ80%は達成できたといえる。 しかしながら新しい研究環境に関しては試行錯誤が続いており、Web上に作業場をおくことは研究者にとって未知の環境であるから解決すべき課題もひじょうに多いことがわかった。所有権等資料の公開に関わる問題や研究成果を保護するためのルール作りも必要であり、現状では都度解決していくしかない。しかし、一方では予想外の進展や改善を見ることもある。本研究が認知されるにつれ、フランスではマザリナード文書を所蔵する図書館、公文書館等から文書の写真撮影等、本研究に有利な環境を提供される機会が増えた。これは資料のデジタル化と公開の推進という観点からすると、今後のマザリナード研究のみならず、他の研究分野にも有意義な貢献となるだろう。同様に当初の計画以上に進んでいる点としては、教育現場への還元もあげられる。転写作業が1年目の業務委託によって済んだために、大学の授業を通じて現代語訳を作成することが可能になったためである。日本に関する文書を選んだことによって、学生の勉学への興味が高まり、教育的効果も上がった。 本研究は研究者向けにはWebにおけるコーパスの公開、研究サイトの運営、さらに一般に向けての公開、そして教育現場では上記の日本人大学生による現代語訳に加えてフランスの大学におけるセミナーの開催を実現し、確実にマザリナード文書という専門的研究領域において、日本から新しい知の集積と共有の方法を発信しているものと確信する。
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今後の研究の推進方策 |
ひとつには本コーパスのデータベースとしての側面を強化するためにマザリナード文書の文献情報の入力を増補する必要がある。さらに、東京大学所蔵コレクション2700点に加えて現存する他のマザリナード文書(現存するのは5000種類と言われる)を追加する必要もある。また、注解等研究成果の公開のために編集機能を強化する必要もある。これらは今後も継続していくべき具体的な課題で、本研究の核になっている電子コーパスの構築自体に関わるものである。一方、研究サイトの運営に関わる問題として、このコーパスに提供される研究成果を研究者の知的財産として保護しつつ、研究を発展させるための共有方法について、より具体的に解決策を考え実行する必要がある。両者は並行して推進されなければならない。この二つの面を問題なく管理することによって、本研究が提供するマザリナード文書研究用サイトは日本から発信され、かつ日本が中心になって開拓する研究領域として安定的にその位置づけを確保できるからである。 また、できれば今後の課題として、この電子コーパスを利用した研究成果の発表をできるだけ増やしたいと考える。研究サイト内であるにせよ、サイト外の紙媒体による発表であるにせよ、それは同時に新しい研究成果の発表方法とそのための環境を整備することにつながるからである。
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